42話 ……まるで成長していない……


 42話 ……まるで成長していない……


「……なるほど……あくまでも、道中の敵が強くなるだけか。なら、押した方がいいか……んー、いや、どうだろう……ぶっちゃけ、もう、これ以上、人生の難易度を上げたくないんだけどなぁ」


「言っておくが、銀の鍵は無限ではないぞ」


「……ん?」


「この学園には、膨大な量の『銀の鍵』が隠されているが、しかし、無限ではない。ある程度、効率を求めてタイムリープをしていかないと詰むぞ」


「……」


「どうするかは貴様しだいだ。しかし、『己の運命をナメない方がいい』とだけは言わせてもらう」


「……実質一択のパターンだったか……はぁ……ただでさえ、ナイトメア・マストダイの難易度で人生やらせてもらってんのに、この上、まだ難易度上げていかないといけないのか……俺の地獄、とどまることを知らねぇなぁ……」


 そうつぶやきつつ、

 センは、


「くそったれが」


 そう吐き捨てて、

 『敵が強くなるスイッチ』を押した。




 ★




 ――その日の夜、

 仮面を装着したセンは、

 校舎の屋上から、彼女たちとロイガーの一幕を見つめていた。


「――イヤなもんをイヤやっていうてるだけじゃ、くそったれ! あいつらを殺されるんはイヤなんじゃ、カス、ごらぁ! おどれごときチ〇カスの成りそこないは、宇宙一の美少女であるあたしのお願いを、黙って聞いとけばええんじゃ、あほんだらぁ! どうじゃい! 実にワガママお嬢様らしいやろう! 悪役令嬢感がエゲつないやろがい! これで、満足か! ブタ野郎!」


「非常に不愉快」


 ロイガーはそう言うと、

 トコから視線をそらしつつ、


「今から、貴様以外を全員殺す。徹底的に痛めつけて、ふみにじる。そのあとで、貴様を殺す」


 そう宣言すると、

 ――一般人『南雲ナオ』を指さし、



「まずは、あそこにいる『カス』から殺す」



 その悪逆非道な殺戮宣言に対し、

 トコは顔を真っ青にした。


 どうにかして止めようと頭を回すが、

 しかし、トコの実力ではどうしようもない。


 深い絶望に包まれた、

 そのタイミングで、




「――流れは完全に同じだな……」




 『仮面&ボイスチェンジャー搭載済みのセン』は、

 彼女たちとロイガーの間に立って、盾の役目を果たしつつ、

 ロイガーを尻目に、ボソボソと、


「強くなっているようには見えない……これまで通りの『カス』のままだと思うんだが……」


 そんなセンの発言に対し、

 ロイガーは、


「……き、貴様、何者だ? どこから……」


 と、極めて当然の疑問を投げかけてきた。

 その問いに対し、センは、


「俺が何者か? ……さぁ、なんなんだろうなぁ……なんか、最近、色々ありすぎて、よくわからなくなってきたんだよ。名前とかは流石に忘れないんだけど、自分が何をどうしたいのか、そういう中心の部分は、ぶっちゃけたところ、だいたいいつもあやふやだ」


 などと、空っぽの言葉を吐きつつ、

 ロイガーに近づいて、


「ほいっと」


 軽めのジャブで挨拶する。


 ボクシングの試合では最初に互いのグローブをトンと合わせるが、

 あれと、だいたい、同じぐらいの感じの、

 ジャブというか、本当に挨拶。

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