24話 第二~第九アルファの完成度は世界一ィイイ。
24話 第二~第九アルファの完成度は世界一ィイイ。
「総合的に『実質的な世界としての完成度』を見れば、第二アルファの方がはるかに上だ。この上なく優れた世界政府『ゼノリカ』を有している第二~第九アルファを超える世界など存在しない」
自尊心という背脂でギトギトになっているラピッドのセリフに対し、
センは、普通にウザさを感じながらも、しかし、
「……なるほど……『自分たちの世界が世界一ィイイ』ということですね。わかります。了解でぇす」
軽やかに流しつつ、
「……ちなみに、その、『第一アルファが異質』というのは具体的に、どういう――」
と、質問をしようとしたセンに対し、
ラピッドは、鬱陶しそうな表情で、
「世界について、もっと知りたければ、図書館で本でも読めばいい。僕は忙しい。わずらわせるな」
「……さーせん……」
そこで、ラピッドは、
魔法を使って、二枚のカードを生成した。
その二枚のカードを、センと黒木に手渡して、
「お前らの身分証明書だ。これより、お前たち二人は、僕の庇護下に入る。元の世界に帰る方法は、あそこに見える『二・ゼノリカ神帝国』で探せば、いくらでも見つかる。もし、犯罪に手を染めれば、その場で灰になる。僕の庇護下に入るということは、僕の監視下にあるということだ。ふざけたマネはするな」
そう言うと、ラピッドは、亜空間倉庫に手を伸ばし、
小さな袋を取り出すと、
「20万エネが入っている魔法の財布だ。なくすなよ」
「……20万……エネ……エネって、お金の単位ですかね?」
「ああ。浪費しなければ、二人で一か月は生きていける額だ。以上。漂流者に対する義務は果たした。僕はもういく」
そう言い捨てると、ラピッドは、
魔法で、背中に翼をはやし、
そのまま、フワリと飛翔して、
どこかに飛び去っていってしまった。
「……なんつーか……本当に、『義務だけ果たした』って感じだったな……」
タメ息まじりにそういうと、
「まあ、でも……この世界には、『実力者が、いやいやでも、社会的弱者に対する義務を果たさないといけない』という『社会福祉の基盤が出来ている』という事実を知れたのは、大きなプラスだった。どうやら、普通に帰れそうだし。身分証明書と、一か月分の生活費さえあれば、生きていくだけなら、そこまで難しくないだろう」
そうつぶやきながら、
センは、黒木に、魔法の財布を渡し、
「じゃ、この金の管理、よろしく、おなしゃす」
「……私に、お金をすべて、あずけるつもりですか? あなたが持っていた方が――」
「図虚空がない俺は、ただの、ちょっと体術が得意なだけの、非常にか弱い男の子でしかない。携帯ドラゴンを使えるお前がもっていた方が色々と安全だろう。お前は、金の管理も、得意そうだしな。あと、お前は、佇(たたず)まいからして、ザ・経理担当って雰囲気がにじみ出ている。さすが、メガネ女子は格が違った」
「……非常に不愉快なのですが? 殺していいですか?」
「落ち着け、ボーイ」
「ガールです。あなたこそ、メガネをかけた方がよろしいのでは?」
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