25話 夢の国ではない。


 25話 夢の国ではない。


「佇(たたず)まいからして、ザ・経理担当って雰囲気がにじみ出ている。さすが、メガネ女子は格が違った」


「……非常に不愉快なのですが?」


「落ち着け、ボーイ」


「ガールです」


「軽く茶化したが、実際のところ、お前が管理した方がいいと思う。だって、お前は、俺と違って、ちゃんと天才だし。というわけで、よろしくでーす」


「……なんというか、『ていよく面倒事を押し付けられた』……という空気感を感じるのですが、気のせいでしょうか?」


「はは、まさか」


 かわいた笑い声で、お茶を濁してから、

 センは、


「さて、それじゃあ、あらためて、『二・ゼノリカ神帝国』とやらに向かうとするか……『不安のほとんど』がとりのぞかれたおかげで、普通にワクワクしてきたな……ふふん……見せてもらおうか、最高クラスの世界である『第二アルファの都市』の性能とやらを。ま、最高位の存在である第一アルファ人の俺を驚かせるのは、なかなか難しいだろうがねぇ」



 ★



「ぉお……すげぇな……」


 音速でフラグを回収していくセン。

 ニ・ゼノリカ神帝国は、

 第一アルファ人を驚愕させるだけの性能が、確かにあった。


 ガッツリと舗装された道には、ゴミ一つなく、

 デザイン性に富んだ様々な商店が行儀よくにぎわっていた。


 高層の建物もそれなりに建ち並んでおり、

 中には、ラピ〇タのように、浮かんでいる建物もある。


 魔法とテクノロジーが美しく調和した外観。

 おそろしく幻想的なのに、

 夢の国という感じはしなかった。

 活気があって、野心に満ちていて、

 なんというか『キラキラ』ではなく『ギラギラ』している感じ。


 誰もが『輝く明日』を信じて邁進(まいしん)している。

 そんな空気感で包まれている。


(……雰囲気がすげぇ良いな……俺の理想に、ガッツリとマッチしている……)


 お上(のぼ)りさん感全開でキョロキョロしているセンの隣で、

 黒木は、深呼吸をしながら、

 『タブレットっぽい何か』に変形している『携帯ドラゴンの液晶』をタップしつつ、


「転移した時から感じていましたが……どうやら、この世界は、自然環境が、とても美しいようです」


 携帯ドラゴンに搭載されている『様々な計測器』を使い、

 空気の鮮度や、大気質、騒音、土壌、水などを調べる黒木。


 ついでに、周囲にいる人間の『資質』なんかも計測していく。


「誰もが高い魔力を持っています……道を歩いている一人一人が、C級、もしくは、B級のGOOに匹敵するエナジー保有量……ここは、本当に、とんでもない世界ですね……」


「携帯ドラゴンの計測器って、異世界人のスペックもはかれるのか。本当に有能だな。……ちなみに、あの時、ドラゴンを倒してくれた『ラピッドなんとか』って兄ちゃんは、どのぐらいだった?」


「D級ぐらいでした」


「ふむ……なるほど。フェイクオーラを使っていたのか」


「おそらく」


 時空ヶ丘に沸くダンジョンのガーディアンの中には、

 たまに、フェイクオーラを使っている者がいた。


 なので、いまさら、その程度のことに驚きはしない。


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