26話 正しく進化した命の循環。


 26話 正しく進化した命の循環。


「――『ラピッドなんとか』って兄ちゃんは、どのぐらいだった?」


「D級ぐらいでした」


「ふむ……なるほど。フェイクオーラを使っていたのか」


「おそらく」


 ――と、そこで、

 黒木が、携帯ドラゴンの液晶をタップしながら、


「この世界は、星の核エネルギーも非常に潤沢ですね……嫌味なほど活気に満ちていて、驚くほど、『生命エネルギーの流れ』に滞(とどこお)りが見られない……まるで、生命と星が、手を取り合っているかのよう」


 心底から感心した顔で、


「これは、あくまでも私の推測ですが……おそらく、この第二アルファにおいて、人間は、免疫機能や、活性酵素(かっせいこうそ)のような役割を果たしているのではないかと考えます。星が人を支え、人も星を支えている。命と世界の理想的な相互関係……」


「第一アルファとは真逆だな、あっちだと、人間は、ガン細胞のようなものだ」


「確かに、現時点での、私たちは、悪性腫瘍やヒドロキシラジカルのようなものでしょうね。星の資源を食いつぶし、海や大気を汚染しているだけの異物……」


 そう言いながら、

 黒木は、この世界の人々を見渡して、


「けれど、もしかしたら、私たちも、いつかは、この世界の人々のように、正しく進化できるかもしれない……星を喰らうガン細胞ではなく……世界と相互に支え合える理想の命に……」


「正しく進化したいのか?」


「正しく進化できる『かもしれない』と言っただけです。可能性を示唆(しさ)するのと、願望を口にするのは同じですか?」


「時にはな」


「……まあ、正直なところ、私は『醜い』のが嫌いなので、出来れば正しく進化したいと思っていますよ。すべての命が正しく進化してくれたら、色々な『歪み』に対して常にイライラせずにすむと思うので」


「そんなに、いつもイライラしていたのか?」


「あら? 気付きませんでした?」


「お前の精神状態に興味がないからな」


「興味がないのではなく、観察力が死んでいるだけでは?」


「まあ、それもある」


 などと話しながら、センたちは、中心部へと向かって歩みをすすめる。


 目に写る全てが新鮮で、センは、たびたび足を止めて、

 街並みに見惚れたり、行き交う人々を観察したりする。


 そんな中で、


(……たまぁに、『えげつない存在感を放っているやつ』とすれ違うな……)


 優れた武を持つ者だけが察することができる独特の気配。

 カズナも相当の気配を纏っているが、この世界を練り歩いている連中は格が違う。


(図虚空がある状態だと、いくらでも対応できそうだが、素の俺だと、だいぶ厳しいであろうヤツも、それなりにいる……えぐい世界だな……)


 初見殺しの投げ飛ばしで決められなければ終わりだろう、

 と考えた直後に、センは、


(そもそも投げ飛ばしが通じるかどうか……)


 『存在感が薄い連中』には通じるだろうが、

 たまにすれ違う『エグい気配をまとったやつ』には、

 なかなか通すのが難しいだろうと、

 センは心の中でつぶやきながら、軽く冷や汗を流した。


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