23話 ハエアル・ゼノリカーノ・テンジョー。
23話 ハエアル・ゼノリカーノ・テンジョー。
「第一アルファ……です」
と、うかがうような口調で、そう答えた黒木。
「……ほう。そいつは、ずいぶんと珍しい漂流者だな」
そう言いながら、長身の青年は、
あらためてセンを見て、
「……しかし、となると……ますます、おかしいな……」
その視線と発言をいぶかしんだセンは、
「おかしいって何がっすかね?」
「第一アルファ人は、世界一スペックが高い人種なんだが……お前からは、そのスペックの高さを一切感じない」
「……それは、悲しい話っすね」
ボソっとそう言ってから、
センは、黒木に視線を向けて、
「……俺らって第一アルファ人なの?」
そう尋ねると、黒木は、軽く首をかしげて、
「……知りません。とある魔導書に、『この世界は第一アルファに位置づけられる』という一文があったので、ためしに言ってみただけです」
「……ふぅん……」
と、相槌を打ちつつ、
長身の青年に視線を向けて、
「ちなみに、ここは、なんという世界なんすかねぇ? 教えていただけると幸いでございやす」
と、丁寧にたずねると、
「第二アルファだ」
「……ほう……つまり、俺たちは、第一から第二に移動したわけか……数値的には、お隣さんだから、漂流するヤツも一番多いのかなぁ、なんて、素人考え的には思うけど、そうでもないっぽい……複雑だねぇ……」
ブツブツとつぶやいてから、
「さきほど、あなたは……あ、というか、お名前をうかがってもよろしい感じすか? ダメな感じすか?」
丁寧に尋ねると、
長身の青年は、胸を張って、堂々と、
「栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席、序列35位、ラピッド・ヘルファイアだ」
「……ピカソばりに長い名前すね……どれが名字でしょう? 『ハエアルさん』でよろしかったでしょうか?」
「呼ぶときは『猊下(げいか)』でいい」
「非常に助かりやす」
「ちなみに言っておくが、僕の序列が少し低いのは、僕がまだまだ若いのと、ガキの頃に少しだけミスをしたからだ。本来の僕の資質は、最高位に数えられている。決して、十席の35位に収まる器ではない」
そんな、ラピッドの、過度な自尊心に対し、
センは、
「……あ、左様っすか……ごくろうさまでぇす、あざぁーす」
心底どうでもよさそうな態度を見せてから、
「それで、あの……さきほど、猊下は、第一からの漂流者は珍しいとおっしゃった。……ということは、やはり、第一と第二以外にも世界がある感じで?」
「世界は無数に存在する。『最も優れた命』が生まれる『アルファ』、次点の『ベータ』、微妙な命しか生まれない『エックス』、他にもいくつか『ランク』が存在し、それぞれに『順位』がついており、その格付けでいうと、第一アルファが最上位。ただし、第一アルファは色々と異質」
たんたんとした前置きを並べてから、
ラピッドは、その目にギラっと『重たいプライド』を光らせて、
「総合的に『実質的な世界としての完成度』を見れば、第二アルファの方がはるかに上だ。この上なく優れた世界政府『ゼノリカ』を有している第二~第九アルファを超える世界など存在しない」
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