22話 漂流者。


 22話 漂流者。


「そこの民間人二名……どっか、ケガしているか? していないな? 出来れば、していないと言ってくれ、対処するのが面倒だから」


「……ま、ケガ……したんだけれども……でも、まあ……メディック担当が将来有望の天才的な人気者だったから、結果的にはノーダメだったかなぁ……」


 そんなセンの言葉に対し、

 黒木は、ひどく冷めた目で、


「……そこまで無駄に持ち上げるのであれば、いっそのこと、『美少女』もつけておいてくれますか? そうすれば、快く、不愉快になれますので」


「褒められても不愉快、侮蔑されても不愉快……いったい、俺は、どうすればいいんでしょうか、オネーサン」


「笑えばいいんじゃないでしょうか?」


「ははははは」


「なに、わらっているんですか、不愉快です」


「理不尽!」


 などと、無駄な会話をしているセンに対し、

 『長身の青年』は、



「ん……ぉいおい、お前、なんで、そんなに存在値が低いんだ? 虫ケラ以下じゃないか? どうした? めんどうな呪いでもくらったのか?」



 と、いぶかし気な目を向けてきた。

 『悪口を言っている』という感じではなく、

 普通に『心配』も入っている声音。


 それが、なんとなく伝わったので、

 センは、強い言葉で返すのではなく、


「さすがに虫よりはマシだと思うが……まあ、ドラゴン相手にワンパンマンかましたあんたと比べたら、俺なんざ、確かに、虫ケラかもしれないが……」


 と、軽い感じで不満を口にする。


 ――と、そこで、『長身の青年』は、

 厳しい顔つきになり、


「ため口、やめろ。僕が誰かわからないわけじゃないだろう? 敬意を払え。『天上』を『ナメている』というコトなら、『わからせてやる』ことになるが、いいのか?」


 『怒り』というよりも、『呆れ』でもって、

 センに、ガッツリと説教をかましてきた。


 その態度に対し、

 だから、センは、


(おっと……こいつ、『偉いさん』か……)


 反発するのではなく、素直に『お互いの立ち位置』を探りはじめる。


(まあ、『龍を一撃で殺せるヤツ』ともなれば、普通に考えて、地位は高いだろうな……勇者とか、英雄とか、そういう立ち位置のやつなのかもしれん……)


 そこで、センは、ゴホンとセキをはさんで、


「えっと……もうしわけないすねぇ。あなたは、その……英雄的な何かで?」




「はぁ? 僕を知らない?」




 そこで、長身の青年は、いぶかしげな顔になり、


「……もしかして、お前、『漂流者』か?」


 と、そんなことを尋ねてきた。

 センは、顎に手をあてて、


「……『漂流者』ねぇ……あなたの中にある漂流者の定義を教えてもらえれば、答えようもあるんすけど、その辺、どうでしょう?」


「では、こう聞こう。どの世界から来た?」


「……異世界転移ってのは、ここだと、よくあることなんすかねぇ?」


「まれにな。で? どの世界からきた?」


「どのって言われても……」


 と、答えに悩んでいると、

 後ろにいた黒木が、


「第一アルファ……です」


 と、うかがうような口調で、そう答えた。


「……ほう。そいつは、ずいぶんと珍しい漂流者だな」

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