53話 はいはい、はいはい。


 53話 はいはい、はいはい。


「閃くーん、がんばってー」



 『エースガールズ』から、非常になれなれしい『黄色い声援』を受けるまでに至ったセン。


(……どうあがいても無理だな。『勝ち方』なんか一ミリも関係ねぇ。あいつらにとって重要なのは、『勝ち上がった』という事実だけ……はぁ)


 ため息交じりに、

 センは、武道大会を勝ち上がっていく。


 何かしらのいやがらせが発動することを、多少なりとも危惧していたのだが、結果的には杞憂に終わった。


 あっさりと、センの優勝で幕を閉じた武道大会。



「「「きゃー、閃くん、すごーい!!」」」



 ――たった一日、もっといえば、ほんの数時間で、

 一気に、『学園最強の有名人』という地位にまで成り上がったセン。

 当たり前のように、モテモテになるセン。


 おまけに、センは、『ただ強いだけ』ではなく、

 超一流企業への逆指名権まで有している超優良物件。


 結果的に、

 数百単位の女子高生から好意を向けられるようになったセン!


 やったね、センちゃん!

 望めば、いくらでも彼女が出来そうだよ!



 ――こうして、センの永い闘いは幕を閉じた。

 めでたし、めでたし。


「……何一つ、めでたくねぇんだよ、くそが」




 ★



 大会終了後、紅院正義に連行されたセン。

 例のホテルに到着し、

 例の会議室に連れていかれたところで、


「……あなたが救世主? もっとゴツい見た目を想像していたのだけれど、ずいぶんとキャシャな男の子なのね」


 最初に声をかけてきたのはゾーヤだった。

 若い姿ではなく、老婆の姿。


 ゾーヤ以外にも、同じ感想を持つ者の方が多い。

 センに対して、『弱そうなガキ』という見た目的結論を出す者が大半。


 ――そんな中、紅院正義は、センに対し、


「最初に礼を言わせてほしい。娘を救ってくれてありがとう」


「……はいはい」


 死ぬほど聞き飽きた『マサヨシの感謝』を軽く流すセン。

 もはや『聞き飽きた』と言い返すことさえダルくなってきたレベル。


 センは、あくびをかみ殺しながら、


「最初に言っておく。俺は、この一週間を何度もループしている」


 自分自身の軌跡を、要点だけ踏まえて、サクっと、説明していく。

 同じ一週間をループしていること。

 一週間後に世界が終わること。

 自分がアウターゴッド級の力を持つこと。


 大事なところだけかいつまんでの説明だったため、

 『具体的な詳細』に対する質問が、

 山のように飛んできたが、


「いちいち説明するのも面倒だ。てめぇで勝手に想像しろ」


 雑にテンプレで切り返すセン。

 ひるまずに質問してくる剛の者があふれたが、

 しかし、センが、本気の覇気で圧力をかけると、

 さすがに、誰も何も言えずに黙りこくった。


 ――そんなこんなで、サクっと終わった、300人委員会との会合。


 センは、

 紅院正義の、


「なんでもいいから、礼をさせてもらいたい」


 という申し出に対し、


「俺をシカトしろ。これは命令だ」


 と、また雑に切り返して、

 そのまま瞬間移動でその場をあとにした。


 そして、その日の夜は、普通にアイテムを探索する。

 たんたんと、己の強さを磨いていく。

 流れ作業のように、

 たんたんと。

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