52話 『脆弱な下等種』の『ペット』なんてダサすぎる。
52話 『脆弱な下等種』の『ペット』なんてダサすぎる。
「正義ってのは粋じゃねぇ。何がどう無粋なのか、その詳細は一ミリも説明できないし、そもそもにして、どうなったら粋って概念に到達するのか、サッパリ、皆目見当もつかないがな」
センのファントムトークを受けたガタノトーアは、
「…………はぁぁぁ」
しんどそうにタメ息をついてから、
フヨフヨと浮遊しつつ、
クティーラの前まで飛んでいく。
自分の近くまでやってきたガタノトーアを、
クティーラは、二秒ほど、まじまじと見つめてから、
「え、あんた、もしかして、ガタノトーア?」
「まあ、一応」
「ダッサ、なに、その姿! キッショ! ダッサ! 死んで!」
「すでに死んでいるようなものだというのに、貴様は、これ以上、私に死ねというのか……」
ため息交じりにそうつぶやいてから、
「あと、造形的に『気色が悪い』か『否か』でいうと、今よりも、元の姿の方が、遥かに気色悪いと思うのだが? 歪な畏怖の具現であった本来の姿と、現在のデフォルメされてしまった姿では、あきらかに――」
などと、冷静な発言を口にするガタノトーア。
しかし、そんなガタノトーアの言葉など、
クティーラは、いっさい聞いていない様子で、
「落ちたものね、ガタノトーア! 『偉大なる暗黒邪神』とまで言われたあんたが、今では、チンケのマスコットってわけ?! 情けないわ! 死んで!」
自己中心の具現と言っても過言ではないクティーラのマシンガン辛辣に対し、
ガタノトーアは、何度目か分からないため息をついてから、
「私に死んでほしかったら、その手で殺してみせろ。私は自分で自分を殺すような愚行は犯さない。本当に死んでしまうその日まで、私は、精一杯、自分の命を全うする」
「オッサンくさいわね! そんなんだから、あんたは、そんなんなのよ!」
「……そうかもしれないな」
などと、テキトーな返事でお茶を濁しつつ、
ガタノトーアは、戦闘用のフォルムへと変形していく。
元の姿に戻るわけではないが、
両手両足をグニュニュっと伸ばし、
『人間型』と真正面から『殴り合い』が出来るスタイルに変化。
流線型で、微妙に発光している、
ハンパにスタイリッシュで、ハンパに気持ち悪い。
そんな姿。
準備を整えると、
ガタノトーアは、まっすぐに武を構えて、
「今の私は、マスターの命令に逆らえねぇ。クティーラ、貴様に怨みは一ミリもないが……もっと言えば、貴様に対して、特定の感情は一切抱いていないが……ボッコボコにさせてもらうぞ」
「くはは! 『脆弱な下等種』の『ペット』に成り下がった無能が、このあたしに、大きな口をたたいてくれるじゃない!」
「ペットではなく眷属だ」
「同じことじゃない! どっちにしろ、あたしの前ではゴミね! あたしは、クティーラ・ヨグカスタム! 奈落を覗く宇宙的恐怖の具現! 深淵の女神! 外なる神になる者! あたしの前では、すべてが搾りカス!」
そう名乗りを上げて、
オーラと魔力を爆発的に高めていくクティーラ。
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