53話 宇宙的恐怖の具現たち。


 53話 宇宙的恐怖の具現たち。


「あたしは、クティーラ・ヨグカスタム! 奈落を覗く宇宙的恐怖の具現! 深淵の女神! 外なる神になる者! あたしの前では、すべてが搾りカス!」


 名乗りを上げた彼女を見つめながら、

 ガタノトーアは、


「私は、ガタノトーア・センエースカスタム。奈落を覗く宇宙的恐怖の具現。深淵の邪神。外なる神に憧れた者。私の前では、貴様ですら、ただの小娘だ」


「バカじゃない?! クティーラは、誰の前でも、最凶の女神! それが、ただの、どうしようもない事実だってことを、心と身体に教えてあげる!」


 そう叫びながら、

 クティーラは、ガタノトーアに殴り掛かった。


 おそろしく尖った魔力。

 拳に集められて熱く輝く。


 迎え撃つガタノトーアの魔力も尋常ではない。

 S級の中でも最上位格の両者。


 その激闘は、やはり、当然、相当に激しい。


 軌道を線にして、

 命を燃やす。


 膨れ上がっていく競り合い。

 常に魔力が暴走し、

 常にオーラが乱れ舞う。


「無様な姿になっている割には、普通に動けるわね! ま、普通に弱いけど!」


「バカめ。この姿になったことで、私は、むしろ、強くなった。新たな力を手に入れたからな。言っておくが、クティーラ、私がその気になれば、貴様はすでに、死んでいる」


「はぁぁ?! なーに、ナメたこと言ってんの?! 本気でやっていないのは、むしろ、こっちの方なんですけど?! 軽く遊んであげているんですけどぉぉぉおお?!」


 自尊心を叫びながら、

 クティーラは、ガタノトーアに詰め寄る。


 最高速に加速して、

 魔力の流れに誇りを込めて、

 ガタノトーアの腹部に叩き込む。


「ぐぬふぅっ!」


 くの字になって、血を吹き出すガタノトーア。

 そんな彼を横目に、クティーラは、満足そうな笑みを浮かべ、


「ほーらね! これが現実! あたしがちょっと本気になったら、こんなもの! どういう流れで、下等種のペットに堕ちたのか知らないけど、下手をこいて使役されるようなバカと、この高貴なあたしじゃ、色々と格が違うってこと!」


「……ぐふっ……さ、さすがに……クティーラを相手に、無傷の生け捕りは……不可能だな……」


 ボソっとつぶやいた言葉は、

 あまりに小さすぎて、クティーラの耳には届かなかった。


 クティーラは、うめいているガタノトーアを見下しながら、

 ムフーっと、満足そうな顔でニタニタしつつ、


「さあ、まだまだ終わりじゃないわ! あたしの強さを、もっと、もっと、教えてあげる! 世界最高、最凶の女神、クティーラ・ヨグカスタムの美技に散れ!」


 調子に乗り続けるクティーラを横目に、

 ガタノトーアは、奥歯をかみしめながら、

 センエースに対しテレパシー系の魔法を使う。


(……マスター……普通にやらせてくれ。このガキをぶちのめしたい)


 そんなガタノトーアの訴えに対し、

 センは、


(ダメだ。お前は火力が無駄に高い。下手したらクティーラを、消滅させてしまうだろう。そのバカ女を、俺の手持ちに加えるのは絶対の必須事項。半殺しなら、まだどうにかなるが、消滅されたら眷属にできない)

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