76話 ザリンギ中将!


 76話 ザリンギ中将!


「な、なんだっ?! なんでだ?! な、なにが、どうなって……げほっ……がはっ……」


 のたうちまわっている彼に対し、

 センは、


「GOOでいうと……まあ、下の下の中ってところか。とうてい、今の俺の相手ができるランクじゃねぇ」


「き、貴様、上位天使か?! 汚いぞ、一般人のフリをするなど!」


「フリじゃねぇ。俺は一般人だ。あと、天使じゃねぇよ。そんな高尚な存在になった覚えはない。俺は、いつだって、ただのどこにでもいる、量産型汎用一般人に過ぎない」


 そんなセンの戯言を、

 紫銀肌の男は普通にシカトして、


「コマンドポストっ! エマージェンシーっ! 一般人に擬態した上位天使に捕縛された! 救援要請! 頼む! 助けてくれ!」


「天使じゃないと言っとろうに」


「急いでくれ! 救援を! 殺される!」


「人聞きの悪いことを。俺がそう簡単に人を殺す男に見えるかね?」


 優しい目と口調でそういうセン。


 そんなセンの言葉に希望をみいだしたのか、

 紫銀肌の男は、センの目を見て、


「……み、見逃してくれるのか?」


 そんな彼の希望に対し、

 センは、それまでの優しかった目を、

 とことん冷徹極まりない目に変えて、


「俺は、『簡単に人を殺す男』ではないが、『身勝手な理由で殺されそうになった時』は、当然、ブチ殺すという結論で反撃させてもらう。俺は聖人じゃない。普通の感性を持った普通の人間だ。――きわめて単純な話、てめぇを生かして返す理由が、俺にはなさすぎる。命をナメんなよ」


「救援を! 至急、救援を!!」


 『これはダメだ』と理解した彼は、

 即座に、必死になって、司令部へ救いを求める。


 彼が所属する軍は、どうやら、それなりに兵隊思いのようで、


「……おっ……」


 時空の裂け目が出現し、

 その奥から、同じ肌色をした屈強な男が登場した。


 その男の姿を見つけると同時、紫銀肌の男は、


「ザリンギ中将!! ありがたい! あなたのような至高の英雄が救援にきてくれるとは!」


 歓喜する紫銀肌の男の視線の先で、

 ザリンギは、センをにらみつけると、


「ただのカスにしか見えないが……」


 ボソっと感想をつぶやく。

 その言葉に対し、紫銀肌の男は、


「見かけに騙されてはいけません! この人間、相当な実力者です! 動きがまったく見えませんでした! 一瞬で制圧されてしまったのです! し、しかし! もちろん、あなたには勝てないでしょう!」


 期待であふれたキラキラの瞳でザリンギを見つめる。


「当たり前の話だ。タイマンで私に勝てる者など存在するはずがない」


 バキバキッと指の関節を鳴らしながら、

 自信満々でそう言ったザリンギ。


 センは、ぽりぽりと頭をかきながら、


「……ずいぶんな自信家さんだな。見た感じ、GOOの中の『中の上の下』って程度にしか見えないが」


 そんなセンの発言にこたえることなく、

 ザリンギは、オーラを練り上げて、


「クドラを一蹴してみせたということは、貴様も、それなりの実力は持っているということだろう。しかし、ハンパな力をもっているからこそ届いてしまう絶望というものが存在する。さあ、本物の高みを知るがいい!」

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