75話 喰っていいのは、喰われる覚悟のあるやつだけだ。
75話 喰っていいのは、喰われる覚悟のあるやつだけだ。
「――この世界における一般人の捕獲に成功。これより脳を解剖し、データを採集する。解析キットを転送してくれ」
『紫がかった銀』という、なかなか見ない色の肌をした男は、
耳に装着している通信機らしきもので、
『どこか』と連絡を取り合いながら、センをチラ見して、
「しかし……話には聞いていたが、この世界の一般人は、本当にレベルが低いな。ここにいるガキの生命力は虫けら並みだぞ」
鼻で笑いつつ、
「……ああ、もちろん、わかっているさ。この世界の『天使』が危険な存在であることは理解している。一般人のガキがカスだからといって油断したりはしないさ」
その言葉を最後に、どうやら、通信を切断したらしく、
センと真正面から向き合う紫銀肌の男。
「これから、貴様を解剖させてもらう。抵抗は無駄だからやめておけ。貴様が何をどうしようと、私に抗うことはできない。貴様と私では、生命体としての格があまりに違いすぎる」
「……無駄だからやめておけ、と言われても、死にたいとは思っていないから、普通に抵抗ぐらいはさせてもらうさ。俺には『やりたいこと』と『やるべきこと』がある。ここで死ぬわけにはいかない。いや、ここで死んでおいた方が楽なのはわかっているんだけれど……まあ、でも、やっぱり、これまでに背負ってきた色々な責任を投げ出すのは、なんかイヤだから、ここではまだ死ねない」
「貴様がどう思うかなど関係ない。脆弱な生命は、上位の生命に喰われて終わる。それが世界の摂理だ」
そう言いながら、
『センを気絶させよう』と突撃をかましてきた紫銀肌の男。
『腹へのグーパン』で『センの意識を飛ばそう』としているのが丸わかりのムーブ。
そんなナメた攻撃に対し、センは、
「……まあ、別に、その考え方を否定したりはしないが」
と言いつつ、
低いスウェーで、攻撃を回避する。
高速のフックをスカされたことに対し、
紫銀肌の男は、ギョっとした顔をした。
避けられるとは微塵も思っていなかったので、普通にプチパニックに陥る。
そんな紫銀肌の男に、センは、
「喰っていいのは、喰われる覚悟のあるやつだけだ……というのも、また、世界の摂理だったりするんだぜ?」
などと言いつつ、
ブレイクダンスの要領で、
ギュンッ、
と、身体を、テクニカルかつダイナミックに回転させて、
「――深淵閃風」
『紫銀肌の男』の足を払い上げる。
「うぉおおっ!」
体勢を崩した紫銀肌の男の胸部に、
『心を整えたセン』は、
「――閃拳」
正確な一撃をお見舞いする。
「ぶはぁあっ!」
胸に風穴をあけられた紫銀肌の男は、
盛大に吐血しながら、
「な、なんだっ?! なんでだ?! な、なにが、どうなって……げほっ……がはっ……」
のたうちまわっている彼に対し、
センは、
『強めに頭を踏みつける』という、
極めて紳士的な対応を取り、
「GOOでいうと……まあ、下の下の中ってところか。とうてい、今の俺の相手ができるランクじゃねぇ」
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