77話 目クソには、鼻クソを笑う資格がある。


 77話 目クソには、鼻クソを笑う資格がある。


「クドラを一蹴してみせたということは、貴様も、それなりの実力は持っているということだろう。しかし、ハンパな力をもっているからこそ届いてしまう絶望というものが存在する。さあ、本物の高みを知るがいい!」


 叫び終えると同時、

 ザリンギは、練り上げたオーラを拳に込めて、

 センの顔面を破壊しようと、豪速で殴り掛かってきた。


 その一手に対し、

 センは、


「やっぱ、目くそハナクソだなぁ……」


 ボソっとそう言いながら、

 あっさりと、ザリンギの攻撃を回避する。


「なぁっ?! 避けた?! 私の一撃を?! バカなぁ!」


「確かに、お前の方がミミクソで、あそこのハナクソよりはマシといえばマシだけれど、しょせん、クソであることに変わりはない。俺の相手はつとまらねぇ」


 センの視点で言えば、

 クドラもザリンギも大差ない。


 ザリンギの方が強いのは事実だが、

 『それがどうした』と言いたくなる程度の差でしかない。



「閃拳」



 少しだけ強めの閃拳を叩き込むと、

 ザリンギは、盛大に血を吹き出して白目をむいた。


 あっさりと一瞬で気絶したザリンギ。

 その姿を見て、クドラが、


「っ?! ……ざ、ザリンギ中将を……一撃……そ、そんなバカな……なんだ、これ……なんだ、この悪夢……こんな……こんな……」


 『クドラにとってのザリンギ』とは、

 ドラゴンボ〇ルでいうと、

 『ドド〇アにとってのフリ〇ザ』みたいなものである。


 圧倒的高みにある超人。

 もっといえば、ヤバすぎる化け物。

 そんなザリンギが、

 『倒される』などということは、

 クドラからすれば、絶対にありえない話。


「うそだ……夢だ……ザリンギ中将に勝てる者など……いるわけ……ひ、ひひ……ありえな……ひひひひ……」


 深い恐怖心で心が壊れて発狂してしまったクドラ。


 センは、そんなクドラに意識を向けることなく、

 みっともなく気絶しているザリンギの頬をしばきあげて、


「寝てんじゃねぇよ」


 何度か、軽くしばきあげることで、


「ぅ……ぁ……っ」


 強制的に覚醒させる。


 目を覚ましたザリンギは、

 すぐさま、自分の状況を正確に把握した。


 自分の方が圧倒的に弱者であるという理解に至ったことで、

 ザリンギの体からは完全に力が抜けた。


(この人間……レベルが違いすぎる……抵抗は無意味だ……ぐっ……)


 強ければ強いほど、相手の強さが理解できるようになる。

 ザリンギは、センの強さが、ほんの少し理解できる程度には強者だった。


 無抵抗で押し黙ったザリンギに、

 センは、



「さて、それじゃあ、色々と話を聞かせてもらおうか。てめぇらは何者だ?」



 そう問いかけると、

 異次元の絶望を知ったザリンギは、


「……わ……私は……」


 包み隠さず、自身の現状と、この世界の天使について、知っていることを全て語った。

 つらつらと、よどみなく、誠意をもって、情報を晒した。


 ――その結果、センは、この世界に関するだいたいのことを理解した。



「ほう……」



 世界は複数存在し、時に、武力を用いて異世界を侵略することもあり得るということ。

 そういう異世界の侵略者から、この世界の人類を守る盾が、

 人の進化した姿である『天使』である、ということ。



「で、仙草学園の実態は、天使の養成施設だと……なるほど、なるほど」

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