26話 無双する閃光。


 26話 無双する閃光。


「……このガイドブック、七階の地図も載っているな。親切ぅ」


 などとつぶやきつつ、

 ボスフロアを目指して迷宮を歩いていくセン。


 その途中で、モンスターが沸いた。

 一般人であれば、瞬殺されるレベルの、

 高難度モンスターだが、


「その程度の力しか持っていなのに、俺を殺したいって? 夢みちゃダメだぜ、ベイベ」


 変なテンションで、そう言いながら、

 出現したモンスターを、過剰なオーバーキルワンパンで蹴散らしていく。


「あいむ、なんばーわん!」


 サクサクと雑魚を狩りながら、

 センはボス部屋へと向かう。


 すでに『近道』は全て開通しているので、

 ボス部屋にたどり着くまでにかかった時間は微々たるもの。


 センは、軽く首と肩を回してから、


「さて、どんなもんかな……」


 などとつぶやきながら、

 ボス部屋の中へと入っていく。




[はじめて見る顔ですね]




 センの姿を視認すると同時、

 ボス部屋に君臨していた化け物がそうつぶやいた。


 七階のボス、サヴァーテ。

 コウモリの翼をもつ奇怪な悪魔。

 巨大でムキムキの体を、はちきれんばかりの高級スーツで覆っているという、形容し難い謎スタイルの中ボス。


「はじめまして、こんにちは」


 などと、呑気な挨拶をしつつも、

 敵の動きと呼吸を確認するセン。



[一人で私の前に立つとは勇気がありますね。その無謀さを称え、本気で相手をしてあげます。――さあ、はじめましょう。本当の地獄を教えてさしあげます]



 そう言って、待ちの構えで両手を広げるサヴァーテ。


 そんな悪魔に対し、センは、


「悪いが、『本当の地獄』程度のヌルいショーなら、ゲロ吐くほど見飽きているから、わざわざ教えてくれなくていいよ」


 まっすぐな本音を口にしながら、

 ゆったりとしたペースで、サヴァーテに近づき、



「閃拳」



 さほど気合の入っていない、

 サラっとした必殺技をくりだす。


 まっすぐに伸びた拳が、

 サヴァーテの腹部をとらえると同時、


 ドボゥフッッ!


 と、肉が炸裂する音がフロア中に響き渡った。


[……え……]


 サヴァーテは、

 自分の現状を理解するのに数秒を要した。


 あまりに唐突かつ意味不明すぎて、

 理解に届くまで5秒もかかった。


 けど、

 さすがに、それだけの時間が過ぎれば、

 自分が『ワンパンで殺された』という事実には気づけた。



[……バカな……なんだ……この力……なんで……]



 疑問符に溺れながら、

 サヴァーテはバタリと倒れて、

 そして、ゆっくりと消滅していった。


 散り散りになったサヴァーテの粒子を尻目に、



「……さて、と。それじゃあ、次の階層に進んでみようか。ガイドブックによると、この先に進むことで、『真理』が分かる可能性があるらしいけど、本当かねぇ」



 そんな独り言を口にしながら、

 センは、奥の扉を抜けて、

 その奥に設置されている階段を下りていく。



 ★



 長い廊下を抜けると、奇妙な日本庭園があった。

 そこを超えて、さらに奥の扉をあけると、


 ――そこはサヴァーテと戦った空間よりも広い玉座で、

 その広い空間のど真ん中には、

 全長五メートル級のロボットが立っていた。



「……まさか、このロボットが真理か? それとも、これがラスボスで、これを倒すと真理を見つけられる的な?」

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