25話 酒神終理は、一般人に興味を抱かない。


 25話 酒神終理は、一般人に興味を抱かない。


 センがスっと手をあげて、


「先に帰ったアホってのは、酒神終理のこと?」


 その質問に、銃崎が答える。


「……ああ、そうだ。君は、あのアホを知っているのか?」


「いや、知らんよ。朝、ちょっとウザ絡みされてムカついただけ」


「……ウザ絡み? ……酒神が? 君に? なぜ?」


「いや、知らんけど。なんか、ひたすらに、よくわからんことをほざいていただけだったから。『この世界の神は、なぜ、こんな世界を創ったのか』みたいな意味不明なことを」


「……」


 銃崎は、数秒考えてから、


(あのアホは、無価値な存在に興味を示さない……ハッキリ言って、この閃と、あっちの才藤は、使い物にならないハズレ……才藤の方は、まだ『生き残れる運』と『生への執着』をもっていそうだが、こっちの閃という男は、ただボーっと突っ立っていただけ。おそらく、恐怖で動けなかったのだろう。なぜ、探究者に選ばれたのか心底謎の一般人。そんな、閃に、酒神終理が興味を示した? ……どうして……)


 考えれば考えるほどに分からない、

 という顔をしている銃崎。


 そんな銃崎に、センは続けて、


「ちなみに、その迷宮ってのは、どこにあるんすかね?」


 銃崎は、いまだ、困惑の中にいるが、


「……第ゼロ校舎の最上階にある、地下迷宮研究会の部室の奥。探究者以外は使えない『特殊エレベーター』から、真理の迷宮へと進むことが可能」


「ほーん、なるほどね」


 ――その後、華日たちからの質問にも答え、

 今後の流れを、サっと説明してから、

 銃崎は解散を宣言した。



 ★



 解散後、

 センは、


(……『真理の迷宮を踏破』して、『万物の真理』とやらを『見つけ出す』のが条件……という可能性は高そうだな……)


 などと、心の中でつぶやきながら、


(さて、どうするかな……んー……まあ、一応、見ておきますか)


 と、決断して、


 第ゼロ校舎の屋上へと向かった。

 当然のようにカギがかかっているが、

 しかし、瞬間移動の前では無意味。


「これが、噂のエレベーターか」


 つぶやきながら、中に入ると、

 パスワードを入力するボタンが設置されていた。


「……んー……」


 そこで、センは、先ほど、解散間際に、

 銃崎からもらった『探究者ガイドブック』のような資料をパラパラとめくり、


「……あった。えっと、地下七階に降りるパスワードは……『177』か」


 つぶやきながら、

 ポチポチと押して、

 降下のレバーを押した。


 すると、

 ギィオンギュオンと奇怪な音が響く。

 直後、瞬時に、センの服装が、

 制服から、村人の服装に切り変わった。


(この服、マジでボロいな……)


 ――きっかり二秒後、エレベーターはガクンッと超高速の降下を開始する。

 一瞬だけ、凄まじい浮遊感に襲われたが、

 なぜだか、それは、すぐにおさまった。



 二十秒ほど経過した所で、エレベーターの扉がゆっくりと開いた。

 そこには、『お行儀よく並ぶ松明』に照らされた石造りの通路が一本。


 その奥には五つの扉。

 地下七階は、広大な迷路になっていて、奥側からしか開けない『近道』が一つも開通されていない状態だと、地下八階へと続く階段前の玉座の間までたどり着くのに、『罠も魔物もなく、さらに車を使った』としても二か月はかかる。


 ――という情報を、ガイドブックから得たセンは、


「……このガイドブック、七階の地図も載っているな。親切ぅ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る