24話 自分のことを棚に上げる閃光。
24話 自分のことを棚に上げる閃光。
(さっきの攻撃で、才藤が死んでいた可能性は十二分にあった。命がけで、他者を守りながら、嫌われることも望む……アホなのか、あいつは)
などと、心の中でつぶやきつつ、
首を横に振って、
(いや……本当は、わかっている。あいつはクズだが、ただのクズじゃない。あいつの気持ち……気持ちというか、プライド……いや、それも違うな。プライドはプライドでも、ニュアンスが違う。誇りではなく意地の方。絶対に譲れないものが、あいつの中にある。あいつは、それに逆らえない。随分と窮屈な生き方だ。マネできないね)
などと考えていると、
そこで、天童が、テレパシーで、
(才藤もたいがいだが、お前も相当だ。たいした差はない。というか、どっちかといえば、お前の方がやべぇ)
(ははっ)
(……『またまたご冗談を』といった感じで笑っているが、しかし、俺は、本音と事実しか言っていないぞ)
――などと話していると、
《セクション・エンド!! フルコンプリート!!》
アナウンスが響くと同時に、4人は――
―――――――――――
――自動転移で元の教室に戻った。
「ととっ……え? あ、もどったの?」
華日が自分の制服姿を確認しながら、そうつぶやいた所で、
――パチパチパチッ……
という、拍手の音が聞こえた。
4人とも、反射的に、音がした方に視線を向ける。
「フルコン、おめでとう。まあ、チュートをフルコンできなかった者など、滅多にいないがな」
そこには、三人の美少女が立っていた。
真ん中にいる、聖堂よりも背の高い美少女――というより美女が、続けて、
「さて、まずは社会の定石通り、自己紹介から始めようか。ああ、その前に」
言いながら、そのイケメン系美女は、ビンに入った緑の液体を才藤に振りかけた。
すると、一瞬で、瀕死の重体だった才藤の体が、ギリギリ動ける中傷まで回復した。
「君の行動は、なかなかに最低だったが、しかし、だからフルコンできたというのも事実。よく頑張った……とは、正直言い難いが、まあ、この世は結果がすべて。よく頑張った」
「……はぁ、そりゃ、どーも」
「あらためて、私は三年生の銃崎美砂。地下迷宮研究会の部長で、探究者チームのリーダー。職業は竜騎士とパラディンのダブル。ランクはA+。こっちの二人も探究者で、君たちの先輩だ」
銃崎に続いて、育ちと品の良さしか感じない高貴さの塊のような女が、優雅に一礼し、
「華日さん、ご機嫌よう。そちらのお二人は、はじめまして。わたくしは、二年生の怪津愛(かいつ あい)と申します。職業はランクBのブラッドサモナー。どうぞ、よろしく」
挨拶を〆る微笑みを浮かべた所で、隣にいるポニテの女が、
「ボクは羽金怜。これで自己紹介は二度目だから、流石に名前くらいは覚えてほしいかな。まあ、忘れられたからって怒ったりはしないけどね。ただ一応、最上級生だから、最低限の礼儀くらいは示してくれないと悲しいかな。職業はランクA-のサムライ。よろしくね」
「あともう一人、二年の女子がいるのだが……で、あのアホ、どこにいった?」
「ボクに聞かれても、『どこ』に行ったのかなんて分かるわけないよ。なんせ、ボクには、彼女が『いつ』いなくなったのかすら、さっぱり分からないんだからさ」
「終様なら、突如不幸に遭われた親戚のお葬式に向かうため、少し前に帰られましたわ」
「ちなみに、亡くなったのは、どういう親戚だと言っていた?」
「父方の祖父の一番上のお兄さんが芸者に産ませた隠し子と言っていましたわ」
「あのアホに伝えておけ。その人は八か月前に死んでいる、と」
「今回で三回目の御臨終。よく生き返る人だね。もしくは、隠し子が三人いたのかな?」
その後の話で、
二人は皮肉を口にしながら、互いに同じクオリティの呆れ顔を作って、溜息をついた。
「まあいい。あのアホがいると、色々としっちゃかめっちゃかにされて、話が無駄に長引くからな。むしろ都合がいい」
そこで、銃崎は、コホンとセキをして、
「これから、君たちに、最低限の連絡事項、現状のまとめを伝える。できるだけ短くするから安心してくれ。私もダラダラ話すのは好きじゃない」
言いながら、銃崎は用意しておいたイスに腰掛け、全員に座るよう指示を出した。
皆が腰をかけたのを確認してから、
「私たちは探究者。真理を追い求める者。万物の真理は、地下迷宮の最深部にある。私たちは、授けられた力を鍛え、駆使し、真理が眠る最奥部を目指す。現時点でたどり着いた階層はゴール手前の地下七階。最下層の地下八階への階段は、とある化物に堅守されている。私達の現時点における最大の目的は、その怪物を倒し、最後のステージへと進むこと。……と、これだけで、ほぼすべてだ。何か質問は?」
そこで、センがスっと手をあげて、
「先に帰ったアホってのは、酒神終理のこと?」
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