16話 規格外の天才。


 16話 規格外の天才。


「これが、グレート・オールド・ワンか……なるほど……人類がどうにか出来る相手ではないなぁ……これに抵抗できる『携帯ドラゴン』は、マジでイカれたテクノロジーやのう」


 そこで、黒木が、


「……な、なぜ、携帯ドラゴンのことを……」


「300人委員会がデータ化して隠しとった魔導書の全部に目を通したから。実物にも目を通したいところやけど、世界各国にちらばっとるらしいからのう。魔導書は、コピーして、具現化しても意味ないっぽいし」


「……いったい、なにを……そんなこと、どうやって……」


「ワシとしては、別に、一から十まで説明してやってもかまわんのやけど……そこのバケモノが、悠長にまってくれるかのう」


「……時間稼ぎを見過ごしてやるつもりはない」


「――というワケらしいから、まずは、そのGOOをどうにかすることからはじめてみようか」


「どうにかするだと? 貴様のような脆弱な虫けらが、この私をどうにかできるとでも?」


「ワシは非力やから、普通の武力で、おどれをどうにかできるわけがない。けど、英知を結集させれば、武力を超越することも可能」


 そう言いながら、

 トウシは、ズボンのポケットから、

 スマホを取り出して、


「起きろ、エルメス……」


 そう呼びかけると、

 トウシのスマホが、厳かに発光して、

 グニュグニュと姿を変えだした。

 数秒後、


「……きゅいっ!」


 小さな二頭身のドラゴンの形状になると、

 そのドラゴンは、かわいらしく声をあげた。


 その様子を見ていたトコが、

 思わず、ボソっと、


「……携帯ドラゴンを召喚した……ぇ、なんで……どうやって……いつ、契約を……」


「契約したわけやない。自分で創っただけや」


「……は?」


「魔導書に描かれていた情報をもとにして、携帯ドラゴンを再現してみた。だから、お前らが契約して手に入れた携帯ドラゴンとは、システムが、けっこう異なる。制限とかを、いろいろ、とっぱらっとるから、こっちの方がはるかに強い。どのぐらい強いかというと……」


 そこで、トウシは、


「トランスフォーム。モード・機械仕掛けの神様」


 宣言した瞬間、トウシの体が、サイバー感で一杯の闘気を放つ龍化外骨格に包まれた。

 脈動するジョイントは、歪な機械仕掛けで、時折、黒煙を吐きだしている。

 顔だけが見えている兜の額には、英知の結晶ともいうべき黄金のブレードアンテナ。


 その様を見たロイガーは、


「……大して強そうに見えないのだが……それは、私の気のせいか?」


 と、小ばかにしたように、そう言ってきた。


「気のせいやない。それは、客観的事実やな」


「……ん? つまり、貴様は、事実として、大して強くはない……ということか?」


「ああ」


「……じゃあ、何しにきたんだ?」


「本だけでは学習しきれんものを奪い取りにきた」


「……はぁ?」


「イスの遺産について、だいたいのことは理解した。非常にえげつないテクノロジーやけど、経験値だけは、技術で補うことは出来ん。当たり前の話。というわけで――」


 そこで、トウシは、

 両手を握りしめて、

 武を構えた。


「おどれと殺し合うことで、ワシは、経験値を補完する」

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