28話 夢と妄想。


 28話 夢と妄想。


「ヒマだったから。退屈だったから。なんだか、やることがなかったから。『色々な言葉』を使って装飾はできるけれど、根本にあるのは、全部同じ。ヒマだったから。それだけがすべてさ。こんにちは」


「……こんにちは」


 しんどそうにため息をつきながら、

 センは、


「ところで……一つ聞いていいか?」


「なにかな?」


「俺が、必死になって会得したオメガレベル……それも、全部、ただの夢か?」


「いや、残っているよ。僕の夢をナメちゃいけない。何もかもなくなったら、それは、もう、夢じゃなく、ただの妄想さ」


「夢と妄想に、なんの違いがあるってんだ」


「知らんな」


 ニャルは、センの質問を全力でなかったことにしてから、

 サラリと、


「センエース。君はオメガレベルをなくしたわけじゃない。けれど、あの出力を出せるのは、僕のサポートがある夢の世界だけ。こっちでは……まあ、オメガレベル100ぐらいが限度かなぁ」


「……」


「あ、ちなみに、『究極超神化プラチナム』なんて、そんな変身技は存在しないから。今後も普通に使えるなんて思っちゃいけないよ。あれは、完全に『妄想』だから」


「……妄想ねぇ……妄想にもいろいろな種類があるが……ここでいうところの『妄想』は、どの系統に当てはまるものなのかねぇ」


 その言葉に対し、

 ニャルは、


「純粋な妄想さ。それ以上にも、それ以下にもなれない……無垢な妄想」


 ニャルの言動から、

 これ以上、追及しても無駄だと悟ったセンは、


「もう一つ聞いていいか? さっきまで、俺が見せられていた『あの世界』は、あんたがつくりだした幻かもしれない……ただ、『モデル』みたいなのはないのか? どこかに、本物の第二アルファが……あったりしないか?」


「んー」


 ニャルは、二秒ほど悩んでから、


「仮に、ここで、僕に『存在する』と言われて、それで、君はどうしたいの?」


「別に、どうこうしたいって話じゃない。ただ、知りたくなっただけ。……いや、嘘だな。本当は……」


「本当は?」


「あってほしいと思っているんだ……きっと……そういう理想の世界が……もし、存在したとしたら……」


「存在したとしたら?」


「もっと強く……俺は……『未来』を望めるだろう」


「それは、誤解だ。希望なんてなくとも、君は、マックスの質量で、輝く明日を求めることができる。だからこそ、世界は、君に――」


「なんだよ?」


「君のテンションにあわせて、ついノリだけで色々としゃべっちゃったけど、フっと我に返って、色々と恥ずかしくなってきたから、この辺で、おしゃべりはやめにしよう。ちょっと眠くなってきたし。明日、朝、はやいし。早朝会議に遅れたらまずいし」


「あんた、めちゃくちゃ『自由気ままな邪神』っぽいのに、なんで、そんな、社畜みたいなことを――」


「命を持つ者は、みな、すべからく社畜であるべき、というのが僕の持論でね」



「捨ててしまえ、そんなクソ持論」


 と、吐き捨てるように言ってから、

 センは、


「……最後に、もう一つだけ聞いておく」


「なにかな?」



「あれは、本当に、『ただの夢』だったのか?」


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