20話 ロイガーは E級ですけど?

 20話 ロイガーは E級ですけど?


「なんで? ……同じS級でしょ? どうして、ロイガーとここまで差があるの」


 いつもの『チョケた感じ』を完璧に失い、

 ただただ茫然としている。


「まさか、アウターゴッド? いや、アウターゴッドが、あんな簡単な手順で召喚できるわけ……そもそも……」


 険しい顔で、ブツブツとつぶやきはじめた茶柱に、

 ウムルが、


「私はアウターゴッドではない。外なる神々は、この私ですら届かない場所におられる」


「……」


「まあ、S級の中でも最高位クラスである自信はあるがね……ところで、今、『同じS級のロイガー』といったか? なぜ、E級のロイガーごときと、私を一緒にする? それは、どういう角度の侮辱だ? あまりに鋭角すぎて、『怒っていいのか』どうかもわからないレベル」


「い、E級?!」


 茶柱は、心底驚いてみせてから、


「い、いや! そんなはずない! さすがに、E級ならトコたちだけでも殺せる! ロイガーは確実に、最低でも『B級』以上の力を持っていた!」


「ふむ……」


 そうつぶやくと、

 ウムルは、瞬間移動で、

 茶柱の目の前まで移動して、

 ガっと、茶柱の頭を右手でつかむ。


 その様子を見たセンが、慌てて、


「ちょっ――おまっ……お前の相手は俺――」


 即座に詰め寄ろうとする。


 そんなセンに、ウムルは、


「落ち着け。記憶を見るだけだ」


 そう言いながら、静かに目を閉じる。

 そして、一秒後、

 瞬間移動で、元の場所に戻ると、


「ふむ……確かに、私が知っているロイガーの強さではないな。明らかに『サポート』を受けている。かなりの上位神の介入……しかし、知らない波形……私の知らない神のマリオネット……おそらくは、これも『終焉の神呪』……ずいぶんと、まあ、歪ませてくれるじゃないか……」


 そうつぶやいてから、

 ウムルは、茶柱に、


「貴様らが闘ったロイガー……確かに、そこそこマシな力を持っているようだが、しかし、階級的にはA級が精々だな」


「……A級……あれでも……A……」


「一つだけ言っておこう。アウターゴッドとGOOの間には『超えられない大きな壁』がある。『その壁』ほどではないにしても、S級とA級の間にある壁は大きい。わかりやすく、明確に数字を出そうか? そうだな……私がその気になれば、A級ロイガーくらい、15体ほど同時に相手をしても瞬殺できる」


「……」


「一つ気がかりなのは、ロイガーが『S級と騙(かた)っている理由』……ただの『愚かな見栄』か、それとも……『誰か』に命じられ、『特定の誰か』に『S級の実力を勘違いさせる』ことが目的か……」


「……っ」


 ウムルの発言を受けて、

 茶柱は、答えにたどり着く。

 『ハメられた』のだと、理解に到る。


「どこの神のイタズラか知らないが……くく……まさか、このウムル=ラトをコマとして、利用するとは、なかなか根性がある。……少々、不愉快……だが、格別『気分が悪い』というわけでもないかな……なかなか面白い体験だった。技術だけ特化したパワーゼロの武神との遊戯。貴重な体験だった。酒の肴くらいにはなるだろう」

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