86話 究極の親バカ。
86話 究極の親バカ。
「どうして、わざわざ、必死こいて、天使軍や『あの子とやら』を育成しているんだ?」
「……私の力だけでは、絶対に勝てない『領域外の混沌』がいるから……」
「……ほう。混沌ねぇ……ほむほむ……で、その『混沌とやら』は、あれか? 『悪者』と思っていいのか?」
「善悪で測れる概念ではない」
「概念レベルでモノを言い出したら、この世に善悪ではかれるものなど、一つも存在しない、という気もしないではないが……まあ、いいや」
哲学の話はいったん、すみにどけて、
センは、コホンとセキを一つはさみ、
「――では、こう聞こう。もしかして、その『混沌とやら』に勝たないと、世界とか人類とかが、すごくマズくなる感じ?」
「世界が終わる」
「……了解だ。おおよそは理解した。負けてしまうと、世界が終わってしまう混沌。大変だ。どうにかして、勝たないといけないね」
「……私ごときが、いくらあがいても、あの混沌には勝てない……けど、『あの子』なら勝てる」
「……」
「あの子は、誰にも負けない」
そこで、『主』は、センを睨みつけて、
「……あなたは、とんでもない力をもっているようだけれど、でも、あの子は、あなたにも……負けない」
「いまいち要領を得なかったが、しかし、あんたが、その『あの子とやら』に、相当な期待をしていることだけは、120%伝わってきたよ。『あの子とやら』に、本当に実力があるのか、それとも、ただの過大評価なのか……」
「過大評価などではない。あの子は真の王。この世の全ての頂点にたつべき存在。間違いなく、あの子が、全世界で最も優れている! あの子がこの世で最も強い! あの子が宇宙でもっともかわいい!」
「……過大評価でなく、たんなる親バカである可能性が急上昇してきたな……」
ボソっとそうつぶやいてから、
センは、
「最後に一つだけ質問。『あの子とやら』のことはもういいから……あんたが、さっき言っていた、その『混沌とやら』は、どこにいる?」
「居場所を知って、どうしようというの?」
「会ってみたいんだよ。興味本位でな。もし、殺せそうなら、殺してみたいとも思う」
とつぶやきつつ、心の中で、
(そいつの討伐が、『元の世界に戻るための条件』……のような気がするんだけど、はたして、実際のところはどうかな……ちなみに、ヨグさん、あなたはどう思う?)
(……)
(またダンマリかよ。やれやれ)
などと、心の中で非生産的なやりとりをしていると、
『主』が、
「へたに手を出せば、世界は、猶予なく、混沌に飲み込まれてしまう。あの混沌を殺せる可能性があるとしたら、この世界の主人公である、あの子だけ。『未来』にたどり着く、『完成したあの子』だけが、すべての希望たりえる!!」
ギラついた目で、そう言うと、
「――あの子が完成するまでの間、私が、あの子の道を守る! そのために――私の限界を解放するっっ!」
底力を圧縮していく。
彼女の全てが沸騰していく。
「はぁあああああああああああ……っっっ!!」
気概と覚悟で全身を充満させる。
凄まじい勢いでオーラが膨れ上がっていく。
驚異的な覚醒の波動。
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