87話 『神』の最終形態を求めた姿。


 87話 『神』の最終形態を求めた姿。



「はぁあああああああああああ……っっっ!!」



 『主』は、気概と覚悟で全身を充満させる。

 凄まじい勢いでオーラが膨れ上がっていく。

 驚異的な覚醒の波動。



 それを見て、センの体が震えた。


(……ビリビリくる……腹の底に不穏を感じる……心臓がビビっているのを感じる……)


 理解を経て、

 現実を目の当たりにする。


 自然と武を構えてしまう。

 神経が研ぎ澄まされていく。


 そんなセンの視線の先で、

 彼女は、

 カっと大きく目を見開いて、

 世界を睨みつけ、

 息を吸い込んでから、






「――究極超神化7っっ!!」






 宣言の直後、

 黒銀の輝きに包まれる彼女。


 『神』の最終形態を求めた姿。

 貪欲なまでの高次エネルギーに対する渇望。


 あまりにも神々しいその姿を見て、

 センは、つい、一歩、後ろに足を引きながら、



(……究極超神化7……か。なんか、どっかで聞いたことあるな……どっかっていうか……ヨグが言っていたな。……ふむ……そうか……マジで存在する変身技だったのか……ぶっちゃけ、ただのハッタリだと思っていたけど……これは、なかなかエグいな……)



 究極超神化7を使用したことにより、

 エゲつないほどの存在値となった彼女は、

 全てを射貫くような目でセンを見つめ、


「私の究極超神化7は完全に不完全。それでも、あなたを――異世界人を葬りさるぐらいはできる」


「可能性はあるな。今のあんたは、かなり大きい。アウターゴッドを何体も着込んでいる俺をも超えている、すさまじい高み」


 究極超神化7を使った彼女に対し、

 センも、『今の自分に出来る全て』で対抗する覚悟をきめる。


 GOOの能力上昇系スキルをフルで稼働させ、

 その全てを惜しみなくアウターゴッドたちに注ぎ込み、

 限界を超えたシナジーを強制させる。


 センも沸騰する。

 今の自分にできる『最強』を求める。


 『今の己に可能な限界』を引き出したセンを見て、

 この世界の『主』である『彼女』は、

 冷や汗を流した。


「……たかが異世界人の分際で……とてつもない覇気……けれど、負けない……負けるわけにはいかない。誰にも、『あの子』の覇道は邪魔させない。私はアリア。……この世界の主人公である『あの子』の『母』としての責務を果たす!」


 そう叫ぶと、

 『アリア』は、センに向かって特攻を決めた。


 使える魔法の全てを駆使して、

 自身に過剰なブーストをかけて、

 後先考えない全力の特攻で空間を切り裂いていく。



 ――純粋な拳をセンにつきつけるアリア。

 そのまっすぐなストレートをギリギリのところで回避しながら、

 センは、


「覚悟が高まった時に、アホほど愚直になる。その感覚、わかるぜ。結局のところ、『まっすぐいってぶっとばす、右ストレートでぶっとばす』――を決め込んだ方が、はやいし強い。なんだかんだいって、しかし、結局、極限の状況では、比類なきパワーとスピードこそが至高」


 などと、自身の哲学を口にしつつ、


「閃拳」


 アホほど愚直な正拳突きで応戦する。


 なんの策もない、ただ気合を入れただけの拳。

 しかし、それが重い。

 速くて、力強い。

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