2話 才藤は、みんなの心の中にいる。


 2話 才藤は、みんなの心の中にいる。


『俺は、お前の剣翼になったことで、【ここではないどこか】とリンクできるようになった。その結果、才藤の存在を知った。思い出したと言ってもいいが、しかし、その表現にすると、鶏が先か、卵か先か問題に発展してしまうから、出来ればやめておきたい』


「えっと、何を言っているのか分からないんですが」


『当たり前だ。分かるように言っていないからな』


「しばかれたいのか?」


『センエース。お前が知っておくべきことは、前の世界で、俺がキーだったように、この世界では才藤零児がキーである、というその一点だけだ』


「……キーねぇ……もしかして、才藤なんたらが、最終的に、俺の剣翼になるのか? やだなぁ……あんな性格のねじくれ曲がっていそうなヤツが、俺の力の一部になるのって」


『なにを愚かなことを。一部どころか、貴様の魂魄の基盤には、すでに、才藤は存在している』


「……なんか、すごく気になることを言われたな。え? すでに、俺の中に、才藤っているの?」


『才藤は、みんなの心の中にいる』


「……やだな、それ……あんなサイコっぽいクソ陰キャが、みんなの心の中にいるとか……人類総サイコパスってこと? この世、ヤバすぎるだろ。ぜひ、消え去ってほしいんだけど」


『そう言ってやるな。才藤にもいいところはある。ちょっと……いや、かなり性格がねじ曲がっていて、重度の厨二で、ある意味、めちゃくちゃ頭が悪くて、どうしようもなく口が悪くて、他人を全力で見下していて、異常に回りくどくて、ところかまわずゲロを吐き散らかす、陰キャの王様みたいなサイコスターだが、しかし、いいところもあるんだ』


「多少のいいところがあったところで、カバーできなさそうなほど、マイナスポイントが多すぎるんだが……というか、具体的に、そのいいところとやらを教えてくれや。才藤には、どんないいところがあるんだ?」


『それはだな……えっと……あれだ……いわゆる、その……まあ、なんというか……つまり……しかして、その……』


「ねぇじゃねぇか!」


『ある! あいつは、いいヤツ……ではないが、しかし、悪いだけのヤツでもない!』


「悪いだけのやつなんか、そうそういねぇよ。結構な犯罪者でも、いいところの一つや二つはあるもんなんだよ。それが人間なんだ」


『才藤は人間ではない。疫病神だ』


「すごいな、才藤。種族からして、マイナス部門の花形スターじゃねぇか。戦慄するぜ」


『あ、間違えた。死神だ。あいつは聖なる死神なのだ』


「……聖なる死神……え、それ、どういう種族?」


『簡単に言えば、『狂気のマッドサイエンティスト』みたいな感じだ』


「なるほど、邪気眼かぁ……痛いなぁ……」


 センは、ため息をついてから、


「つぅかさぁ……一つ聞いていい?」


『なんだ?』


「なんとなく……ほんとうに、なんとなくなんだけど……ものすごくイヤな予感がするんだよねぇ」


『100%感覚だけの話をされても困るが』


「まあ、そうだろうけど……とりま、一つ聞きたくて……この世界の『条件』は、バカニート世界のソレよりも上……という予感がヒシヒシとしているんだけど、その予感はあたっている?」


『クズニートだ。……って、俺に言わせるなよ』


「で、どうなんだ? 俺の予感は当たっている感じ?」

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