1話 厨二迷宮。


 1話 厨二迷宮。



 ――目が覚めた時、

 センは、ベッドの上にいた。



「はい、また見知らぬ天井ェ……」



 そこは、知らない部屋だった。

 似たような感じではあるのだが、

 明らかに違う部屋。


 整頓のされ具合と、簡素さと、所有している娯楽物の系統は同じ。

 ただ、間取りが明らかに変わっている。


 『同じ人間が、別の部屋に引っ越した』。

 と表現するのが、おそらく、最も適切。


 そんな状況下で、

 センは、


「……おい、ごら、虹色の変態……出てきて説明しろ」


 図虚空を召喚し、

 ヨグシャドーにつめよるセン。


 すると、


「銀の鍵は、すべてがすべて、完全な逸品ではない。中には、バグったゴミが混じっていることもある。――どうやら、バグった銀の鍵を使った結果、世界線ではなく、世界そのものを移動してしまったようだ」


 などと、前回と同じ説明をほざきくさりやがった。

 センは、ピキった顔で、


「……んなこたぁ、もう分かっとるわい」


 ブチギレながらそうつぶやきつつも、


「ふぅ……はぁ……」


 軽く深呼吸で自分を整えてから、


「……くそが……で? ここを切り抜けるための条件は?」


「当然、自分で見つける必要がある」


「……はぁ……」


 深いため息をついてから、


「お前、タイムリープする前に、何か言っていたな。この世界のこと……確か、厨二迷宮がどうとか」


「ああ。ここは……間違いなく『厨二迷宮』の世界だ」


「……なんで、どいつもこいつも、そんなクソみたいな名前なのかねぇ。まあ、別にいいけどよぉ。確か、前の世界が……えっと、なんだっけ? カスニートだっけ?」


「クズニートだ」


「どっちでもええわい」


 吐き捨ててから、センは、


「条件は前と同じか?」


「ああ」


「えっと、確か……元の世界に戻るには、条件を満たした上で、銀の鍵を使う必要があって、その条件を満たさずに、銀の鍵を使ったとしても、この厨二迷宮とやらの世界内での世界線を移動するだけ。条件を満たさない限り、世界そのものを移動することはできなくて、この世界に銀の鍵は存在しない……それで間違いないか?」


「よく覚えていたな。その通りだ」


「……あー、めんどくせぇ……」


 ため息をつくと、

 そこで、背中に、剣翼が顕現して、



『ここが、才藤の世界か……ふむ。俺の世界と似ているな。……というか、ほぼほぼ同じだな。あいつの世界だから、もっと、変態みたいな感じかと思っていたが……世界そのものは普通というか、デフォルトだな』



「おいおい、勝手に出てくるなよ……つぅか、才藤って誰だ?」


『お前も知っているはずだぞ。クラスメイトだからな。記憶を探ってみろ』


「はぁ? ……ああ、確かに記憶の中にあった。同じクラスの陰キャ野郎。だいぶ性格の悪そうなツラをしている……つぅか、天童……お前って、俺の記憶にアクセスできるの?」


『いや。まあ、できなくもないが、才藤に関しての知識は道筋が違う。俺は、お前の剣翼になったことで、【ここではないどこか】とリンクできるようになった。その結果、才藤の存在を知った。思い出したと言ってもいいが、しかし、その表現にすると、鶏が先か、卵か先か問題に発展してしまうから、出来ればやめておきたい』

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