最終話 終わった世界で。


 最終話 終わった世界で。


 天童は、


(コスモゾーンに触れた今の俺なら、少しだけ理解できる……たとえるなら、ボーナス値の振り直し……もしくは、ガチャのリセマラ……それは、すなわち、妥協を許さない最強への渇望……命の丘の向こう側を求め続けた執念)


 心の中で、


(破格の回数を積んだとはいっても、しょせんは、ポテンシャルの厳選回数でしかない。その先でどう仕上がるかは、また別の話。だが、スタートの厳選で、『それだけの地獄を積んだ』ということは、『それだけの覚悟を決めた』ということであり、かつ、『それだけの覚悟を背負えるだけの器がある』ということ。17兆を超える試行回数……もし、『それほどの覚悟』ですら『届かない』というのであれば、もはや、何をしても届かないという証明になる……)


 そうつぶやきつつ、

 しかし、センに対しては、


『……もちろん、気のせいだ』


 サラっと嘘をついた。


 天童が嘘をついていることを理解した上で、

 センは、軽くため息を一つ挟んでから、


「ああ、そうかい。……ところで、一つ聞いていいか?」


『なんだ?』


「いや、まあ、そんなことはないだろうとは思うんだが……しかし、一応、確認したくてな」


『だから、なんだ?』


「……この世界、終わってない?」


 ソルをしりぞけた後の世界は、

 とても空虚というか、

 正確な無音で、

 むしろ、逆に耳が痛い。


 『何もない』と感じてしまう無為な光景。

 焼け野原ですらない無の領域。


『……ああ、もちろん、終わっている。どうにか、トコたちだけは守りたかったんだが、結局、全部壊されてしまった。もはや、この世界には何も残っていない』


「……あ、やっぱり……えっと、それで、元に戻せるのか? ドラゴ〇ボール的なアイテムで、『全部、もとに戻して』みたいな感じのことは可能なのか?」


『不可能だ。この世界は、すでに終わっている。どうしようもない』


「……え、いや、ソルを殺さないと終わるって言ってなかった?」


『あれは嘘だ』


「……じゃあ、なんで、お前、ソルと闘っていたの?」


『家族を殺されたんだ。殺し返さないと気がすまないだろ。もはや、どうにもならないと分かっていたとしても、そんなことは知ったこっちゃない。俺は俺の復讐を果たした。それだけの話だ』


「……あ、そう……」


 呆れた感じにそうつぶやいてから、

 センは、


「おい、ヨグシャドー。俺は条件を満たしたのか? それとも、何かミスっていて、もう一回、この世界でやりなおすのか?」


 そう声をかけると、

 図虚空が召喚され、その中にいるヨグシャドーが、


「天童の性能が、思いのほか優れていたな……本来であれば、この世界で、5~60回ほどやり直す予定だったのだが……」


「なんか、とんでもないこと口走ってやがんなぁ」


「この調子だと、厨二迷宮の世界でも、一撃クリアできるかもしれないな」


「さらに、とんでもなく不穏なことを口走っていやがる……おい、ヨグシャドー。俺の質問に、いい加減、答え――」


 詰め寄ろうとしたところで、

 ヨグシャドーは、

 有無を言わさず、


「銀の鍵よ。センエースは、まだ頑張れる」



 そんなことを口にした。

 すると、センの『懐に隠されていた銀の鍵』が、

 パァアっと輝き始めた。


 その光を見たセンは、


「ちょ、おまっ……勝手に――」


「こんな、すでに終わった世界に長居しても意味はない。さっさと、次の世界で、貴様の可能性を示せ」


「おまえ、マジでいい加減――」


 とにかく文句をいわないと気がすまないセンだったが、

 しかし、意識がスゥっと途切れてしまった。

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