101話 この上なくイカれた執念。


 101話 この上なくイカれた執念。


「ぶっはぁああああああああああっっっ!!」


 白目をむいて、血を噴出したソル。


「……ぶほぉ……わ、私が……壊れる……これは、おかしい……この程度で……私が壊れるわけ……」


 フラつきながら、

 ソルは、自分をぶん殴ったセンを睨み、


「この時空の……命ではない……いつの……まさか、未来か……そうだな……わずかに、その因子を感じる……そうか……未来には……これだけの可能性を秘めた主人公が……ぐほっ……」


 意識が薄れていく中で、

 しかし、ソルは、まっすぐにセンを見つめて、


「これだけ大きい可能性……となれば……『同じ時空にいる私』も……『相当に大きい』だろう……」


 ついには、ばたりと倒れこんで、


「貴様が……とても大きい可能性を持つのは分かった……しかし、私は、なぜ壊れた……この程度で壊れるほど……脆くは……」


 そこで、ソルは、

 『センの中心』を覗き込む。

 すると、


「……っっ」


 ソルは思わず、限界まで目を見開いて、

 ぽかんと、マヌケに口を開き、


「……じゅ……17兆……7777億……6555万……3321回……だと……な、なんだ、この数字……なんだ、この……異常な数字は……」


 クラっとする。

 深い眩暈(めまい)。


 頭がおかしくなりそうな数字。


「まさか……それほどまで……そ、そこまでしないと……無理なのか……」


 深い絶望を感じているソル。

 だが、


「……それほどまでの回数に……耐えられる器など……存在するのか……」


 そこで、ソルは、あらためてセンを見つめた。

 『センの奥』ではなく、

 『センそのもの』を見つめる。




「……すごいな……そうか……すごいな……お前は……」




 そこで、センは、小首をかしげて、


「なにが?」


 と、たずねてみた。

 しかし、ソルは、センの問いには答えず、


「……天童も……相当な器なんだが……それでも……60032回だ……それでギリギリだった……」


「だから、なんの話をしている? それは何の数字だ?」


「敬服するよ……ドン引きしたと言ってもいいが……なんにせよ……がはっ……」


 さらに、濃い血を吐き出すと、

 ソルは、


「貴様なら……超えられるかも……しれない……というより……貴様でも無理なら……もう無理……だな……」


 最後にそう言い捨てると、

 そのまま、スゥっと、世界に溶けていった。


 世界に溶けていくソルを見つめながら、センは、


「一ミリたりとも、何言っているか、わかんなかったな……」


 ボソっとそうつぶやく。


 そんなセンに、

 天童が、テレパシーで、



『礼を言う。センエース。おかげで、家族のカタキを討つことができた。心から感謝する』



「……天童、お前、ソルが言っていたことの意味、少しでも分かったか? 17兆がどうとか、6万がどうとか、なんか、色々と数字を言っていたが」


『……いや、まったく。興味もない』


「なんだか、含みのある間があったような気がするんだが、気のせいか?」


『……』


 天童は、含みのある間をとりながら、

 心の中で、


(コスモゾーンに触れた今の俺なら、少しだけ理解できる……たとえるなら、ボーナス値の振り直し……もしくは、ガチャのリセマラ……それは、すなわち、妥協を許さない最強への渇望……命の丘の向こう側を求め続けた執念)

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