100話 主人公と言う名の『キン〇ボンビー』。


 100話 主人公と言う名の『キン〇ボンビー』。


「ついさっきまでは、自分のことを主人公だと思っていたが……違った。おそらく、主役はお前だ」


「いやいや、お前だ! 主役はお前なんだよ! 俺じゃない! お前の方が、あれだ! なんか、主役っぽい顎のラインをしている!」


「……さっきから、むりやり、なすりつけようとするな」


「世界の『主人公』などという『キ〇グボンビー』を他者に押し付けられる機会なんか、そうそうないんだ! 諦めてたまるか! 天童! お前が主役だ! がんばれぇ! サポートは任せろ! 貴様がナンバーワンだ!」


「……ああ、ダメだ……もう死ぬ……」


「まだ死なん! なぜなら、お前は主役だから! 主役は、絶対に死なないんだ! 俺は詳しいんだぁああああ!」


「……あとは、託したぞ、センエース」


 そう言いながら、

 天童は、自分の胸に手を当てる。


「……俺は、お前の翼になる……受け取れ」


「レ〇ドブルきどっている場合か! 翼なんか授けんでいいから、覚醒しろ! そして、あのヤバい敵をぶっつぶせ! たのむよ! もう、俺、疲れたんだよ!」


「……頼んだ……ぞ……」


 その言葉を最後に、

 天童の体は光に包まれた。


 淡い光は、センの背後に集結して、

 輝く剣翼となった。


 天童の剣翼を背負ったセンは、


「どわぁああ! くそったれぇええ! 結局、『主役という名の宿命キングボ〇ビー』を、おしつけられたぁあああ! くそがぁあああああああああああっ! せっかくのチャンスだったのにぃい! この地獄から抜け出せるチャンスだったのにぃいい!!」


『――チャンスなんかじゃねぇよ、センエース。お前の剣翼になったことで、よりハッキリした。やはり、お前が主役だ。お前以外の誰も、お前の責務は背負いきれない』


 センの剣翼になった天童は、

 ヨグシャドーと同じく、テレパシーで、


『あらためて、たくしたぞ、センエース。お前なら、超えられる。ソルを超えて、あの丘の向こうにたどり着け!!』


「あの丘?! どの丘?!」


『命の丘の向こう側だ!! お前ならたどり着ける! お前に、俺の全部をぶちこむ!!』


 天童の剣翼が、

 より一層激しく発光しはじめた。


 強く、強く、強く、

 まるで、世界を包み込むような光。


『いけぇえええ、センエェエエエエスッッ!!』


「どわぁああっ!」


 天童の剣翼は暴走する。

 まるで、腹をすかせた獣の咆哮。

 凶悪な獰猛さを爆発させるブースター。


 イカれた推進力で、

 まっすぐに、ソルへと向かっていく。


「く・そ・がぁあああ! ここまできたら、もうしゃーねぇから、やったらぁああああ!」


 むちゃくちゃな状況の中、

 これまで同様、

 あきらめることを諦めて、

 自分の一撃にかけるセン。


 魔力とオーラを極限まで集中させて、



「――龍閃崩拳――」



 極悪な一撃を放つ。

 エゲつない加速を受けた超必殺技。


 その拳は、

 ドリームオーラを突き破り、

 ただまっすぐに、

 ソルの中心に突き刺さる。


「ぶっはぁああああああああああっっっ!!」


 白目をむいて、血を噴出したソル。


「……ぶほぉ……わ、私が……壊れる……これは、おかしい……この程度で……私が壊れるわけ……」

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