11話 ツミカさんは揺るがない。


 11話 ツミカさんは揺るがない。


「ワシの何を知ってんねん」


 ため息をついてから、


「というか、お前、魔導書もっとんのかい……なるほど、だから発狂しとんのか。納得や」


「ツミカさんは、魔導書を手に入れる前と後で、何一つ変わっていないにゃ。その事実は、トコてぃんたちが証明してくれると思うから、あとで確認しておいてもらいたいにゃ」


「……もともとイカれとんのか。最悪やないかい」


 そう言いながら、中身に目を通す。

 紙に記されているのは、

 数字や記号の羅列。


 規則性があるようにもみえるが、

 整理されたランダムとも思えた。


「……さっき、おまえ、『袋とじ』がどうとか言うとったけど……魔導書に袋とじとかあるんか?」


「正確に言うと、『隠されていた暗号』みたいな感じにゃ。ツミカさんの超絶頭脳と圧倒的幸運を駆使することで、どうにか、秘密のページを見つけ出したのはいいけど、暗号の内容はさっぱりで、お手上げだったにゃ」


「……ほう……」


 数字や記号の羅列を目で追いつつ、


「ところで、一つ疑問なんやけど、魔導書ってコピーできんのか?」


「普通のコピー機だと無理にゃ。けど、ツミカさんは、『二頭身のでっかいトカゲ』という、ハイパーテクノロジーをもっているから、ただの紙としてコピーするだけなら、そこまで難しくないにゃ」


「……ほーう……『ハイパーテクノロジー』ねぇ……」


 そうつぶやきつつ、

 心の中で、


(……二頭身のでっかいトカゲ……いったい、なんの比喩や?)


 普通に首をかしげる。


 そんなトウシに、

 茶柱は、


「さて、それじゃあ、ツミカさんは、用事があるから、これで失礼させてもらうにゃ。タナてぃんは、10日以内に、その暗号を解読すること。これは絶対の命令にゃ。わかったかにゃ?」


「なんで、ワシが、おどれの命令を聞かなあかんねん。ナメんな。しばきたおすぞ」


「そんな強気な発言をして大丈夫かにゃぁ? 今朝も言ったけど、ツミカさんのバックには、武闘派の過激派が大量に控えているにゃ。ツミカさんには逆らわない方が身のためだと思うにゃぁ」


「ワシのプライドが、あの担任より下やといつから錯覚していた?」


「……ふーむ……思ったより強情だにゃぁ……いろいろと扱いにくいにゃぁ」


 ボソっとつぶやいてから、

 茶柱は、ふところから、何かのスイッチらしきものを取り出して、


「あまり、この手は使いたくなかったんだけど……仕方ないにゃぁ」


「そのスイッチはなんだ? まさか、押したら爆発するとか言わないよな?」


「ご名答にゃ」


 そう言ってから、スイッチを押す。

 その直後、


 ドガァァンッッ!!


 と、地響きするほどヤバい音が響き渡った。


 トウシが、反射的に、窓の外に視線を向けると、

 音のした方――遠くから、モクモクと煙が立ち上っていた。


 その数秒後に、颯爽と響き渡る、

 警察と消防のサイレン。

 八方から、ウーウーと、やかましく、こだましている。


「……え? ……えぇ……うそぉん……え、ウソやろ……え、マジで、お前、爆弾つかったん?」


「ツミカさんは、手段を択ばないタイプだということが、お分かりいただけたかにゃ? ツミカさんを前にすれば、常識という脆い弱者は、いつだってアワを噴いて倒れるのみなのにゃ」

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