12話 異常者と異常者のアンサンブル。


 12話 異常者と異常者のアンサンブル。


「……え? ……えぇ……うそぉん……え、ウソやろ……え、マジで、お前、爆弾つかったん?」


「ツミカさんは、手段を択ばないタイプだということが、お分かりいただけたかにゃ?」


「……」


「今の爆弾は、あくまでも脅し用で、安全な場所にセットしたから、被害は出ていないはずだにゃ。けど、安全な爆弾は、さっきの一つだけ。スイッチはもう一個あるから、気を抜かない方がいいと思うにゃぁ。はたして、2個目の爆弾は、どこに設置されているのかにゃぁ。保育所かにゃぁ、それとも、小児病院かにゃぁ」


「……」


「猶予は10日にゃ。10日を過ぎても解読できなかった場合、罰として、罪のない子供たちが犠牲になってしまうにゃ」


「……マジではやらんよな? さすがに――」


「ツミカさんにとって、知らんガキなど、落ち葉と同じにゃ。ツミカさんの道に落ちていたら、容赦なく踏ませてもらうにゃ」


「……」


「じゃ、というわけだから、暗号解読、全力で頑張ってほしいにゃ。ちなみに、その暗号、ツミカさんが10日かけてもサッパリな気がする代物だから、非常に大変だと思うけど、でも、大丈夫、大丈夫。タナてぃんなら、きっと、いけるにゃ。知らんけど」


 そう言って、茶柱は、トウシの前から去っていった。


 残されたトウシは、


「……はぁ」


 心底ウザそうに天を仰いでから、


「あのアマ、ウザすぎる……ぜったい、ろくな死に方せぇへん……誰も愛さず、誰にも愛されず、その独特過ぎるサイコで魂を焦がして死んでいく……そういう人間や。間違いない……」


 ただの本音を口にした。


 心底しんどそうに、何度かため息をついてから、


「……暗号解読ねぇ……」


 目線を、紙にうつしてから、


「10日以内ねぇ……」


 茶柱からつきつけられた期限を反芻しつつ、

 ボソっと、




「……もう解けたんやけど……」




 そう言いながら、

 トウシは、手の中の紙をグシャグシャっと丸めてゴミ箱に投げ捨てた。


「ケタがバグっとるRSA暗号。ありえん計算量を求めてくる狂気の羅列。しかし、素因数分解みたいな、お行事のいい計算は、ワシの十八番。秘密鍵を見つけるんにちょっと苦労するけど、これだけヒントがあったら問題なし。あとは、端から計算していくだけの簡単なお仕事。計算量的安全性は、ワシの前では無意味。まあ、ワシ以外にとっては、ものごっつい、しんどいん作業なんは間違いないけどな。一から順番に計算していったら、かなり計算の早いやつでも、アホほど時間かかる……最低でも5年ぐらいは必要ってところか。数学系の天才やったら、10日ぐらいでどうにか、ヒントの一つぐらいは発見できそう……まあ、そんな所やろう」


 などとつぶやきつつ、トウシは、スマホを取り出して、

 ブラウザを開き、


「……魔導書の暗号を解読したら、アドレスとパスワードが出てきましたよ……と。いろいろと、ふざけた話や……」


 ぶつぶつと、この状況に文句をつけつつ、

 アドレスを入力して検索。


 すると、

 『真っ黒な画面』に『パスワードを打ち込む空白が表示されているだけのサイト』にたどり着いた。


 その異様さに、トウシは、一瞬だけ怯んだが、


「……ふん」


 と、己を鼓舞するように、鼻で笑ってから、

 パスワードを入力する。


 すると、

 ブブっと、何か、不穏な音が、トウシの耳をつく。

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