34話 本能のノイズ。
34話 本能のノイズ。
『アカシックレコードの禁域に踏み込む必要がある。カギは持っている。真理の迷宮をクリアした実績をカギにする。母上の権利を行使し、真理の向こう側を手に入れる』
そんなミスターZの宣言を聞いて、
センは、
「勝手に、母ちゃんのクリア権を使っていいのか?」
『貴様を排除できなければ、権利を持っていても意味はない。母上ならば、【神の力】がなくとも、世界を再構築することは可能だと私は考える』
「お前がどう考えようが、知ったこっちゃないが、親の許可なく、子供が勝手に親の財産を使うっていうのは、どうなんだろうねぇ……と思わなくもない」
『貴様がどう思うかなど、どうでもいい』
「まあ、そりゃそうだ」
そう言ながら、センは動きを止めて、
ミスターZがここから何をするか見届けようとする。
邪魔できるのであれば、
普通にちょっかいをかけていただろうが、
無敵バリアの攻略法が見えていない現在では、
手の出しようがないので、
とりあえず、何をされるのかを見届けてから、
また考えようとしている。
(それに、濃厚な経験値にできるかもしれないし……正直、あいつ自体の強さは微妙だから、『謎の無敵バリアをやぶる』ってだけじゃ、たいした経験値にならないだろうしなぁ……)
などと、心の中でつぶやいていると、
ミススターZは、
『本能のノイズ、カオスの螺旋。私は背負う。黄泉(よみ)の門より超えて咎(とが)を。無限の罪を。さあ、詠おう。詠おうじゃないか。いつか、必ず、万物のカルマは、黄金と天光に満ちた裁きを超えてゆく。たゆたう一瞬を飾りし刹那の杯を献じながら。――私は、ミスターZ。輝く光を背負い舞う一閃』
酒神がつぶやいていたコールをつぶやいた。
ハックや無詠唱化による効率低下を嫌った完全詠唱。
まるで願いでも込めているかのように、
ミスターZは、本気でコールする。
「またポエムか……なに、それ、流行ってんの?」
と、センが煽っていくと、
ミスターZは、
『――見せろ。英知の最果て。その尊さは、母上を飾る輝きにふさわしい』
ラリったように、フワフワしながら、
世界に対して命令するミスターZ。
すると、
その問いかけに、
『彼女』は応えた。
ありえない美貌と、底知れない力を合わせ持つ、謎の美女。
まるで『女神様』のような女。
登場すると同時、
彼女は、まっすぐに、ミスターZの目を見て、
「ミスターZ。君に、その権限はない」
と、言い切った。
『権限ならある。母上の権限を行使する』
「言い方を変えよう。私は、君を拒絶する。カギをもっていようが、いまいが、関係ない。私は、門番として、君の望みを正式に拒絶する」
『な、なぜ……』
「耐えられないからだよ。『酒神シリーズ』は非常に優秀な素体だが、しかし、どれも、非常にメンタルが脆い。『オリジナルの因子をダイレクトに受け継いだ完全体』に『絶対的精神的支柱』の加護がのっている状態であれば、真なる英知を得ても壊れはしないだろうが、すでに壊れかけ……というか、完全に壊れてしまっている、その酒神終理に、英知の最果ては重すぎる」
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