35話 完全なる宣言。


 35話 完全なる宣言。


『――オリジナルの因子をダイレクトに受け継いだ完全体』に『絶対的精神的支柱』の加護がのっている状態であれば、真なる英知を得ても壊れはしないだろうが、すでに壊れかけ……というか、完全に壊れてしまっている、その酒神終理に、英知の最果ては重すぎる」


『……し、しかし、このままでは、センエースを排除できない』


「そもそも、君が、その仕事を担う必要がない。異世界よりの使者を相手にするのは主神であると相場が決まっている」


 そう言いながら、

 女神のような女は、

 ミスターZにソっと触れて、




「あとは私に任せて、眠りなさい。起きた時には、すべてが元に戻っているでしょう」




 彼女にささやかれると、

 ミスターZは、糸の切れたマリオネットみたいに、

 ズシンと、その場に倒れこむ。


 そんな、一連の様子を見ていたセンは、


(この女……エグいぐらい強いな……)


 足運びと、呼吸のテンポ、

 目線の配り方と、単純なたたずまい。


 彼女の一挙手一投足が、

 『彼女のえげつなさ』を、あますことなく表現していた。


 ――彼女は、

 スっと、センに視線を向けた。


 透き通るような瞳。

 まるで、この世の全てを見通しているかのような澄んだ眼差し。


 センは、その眼差しに押しつぶされないよう、

 心を強く保ちながら、


「……はじめまして、俺はセンエース。しがない一般人だ。こんにちは」


「はじめまして、私はグリム。この世界の主神にして、聖なる死神の一等賞」


「言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい厨二だな」


 などと言いつつ、

 センは、ゆったりと、武を構えて、


「この状況、正直なところ、いまいち、掴み切れていないが……あんたの目を見ていると、おおよその未来予想図をつかめる。あんたは、これから、俺をボコボコにするつもりでいる。どうだ? 正解?」


「正解ではない。私の仕事は、君を壊すことではなく、導くことだから」


「導く、ねぇ。たいそうな言葉だぜ。ただ、具体性が乏しいから、何がなんだかわからねぇ。人に説明するときは、抽象性をはぶいて、幼稚園児にも伝わるよう、シンプルかつ単純な言葉で頼むぜ」


「シンプルと単純は同じ意味では?」


「厳密にいうと違う。なにがどうと言われたら、ちょっと困るが」


 と、そこで、

 センは、視線の強度を高めた。


 冗談の時間は終わり、という合図。

 センは、どこまでもまっすぐに、グリムをにらみつける。


「俺を壊す気はないといいながら、あんたの殺気はレベルが違う。正直、最初から、ずっとションベンちびりそうだった。――そこまでの『濃密な殺気』を向けられてしまえば、さすがの俺も、笑って見過ごすことはできない。かかってくるなら、本気で殴り返すから、そのつもりで。俺は、男女平等だから、相手が美少女だろうと手加減はしない」


 そんなセンの言葉に対し、

 グリムは、コクっと、一度だけ、肯定の頷きを見せた。


 何をどう肯定したのか、

 イマイチ、核心を掴めない頷きだった。


 とにかく、グリムは、

 スゥと、息を吸って






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「――/\**【【究極超神化7】】**/\――」

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         〈* *〉

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 輝きを増した。

 宣言し、変身する。

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