48話 あの女、嫌いだわぁ。


 48話 あの女、嫌いだわぁ。


「昨日の夜は、すごかったにゃぁ。あんなに熱い夜は、生まれて初めてだったにゃぁ」


 などと、大声で喚くものだから、

 クラス中が、全力でザワっとしていく。


 茶柱の奇行事体は、

 別段、珍しいものでもないのだが、

 しかし、いくら頭がおかしい茶柱とはいえ、

 『男子生徒に絡んでいくタイプ』の、

 『シャレになりえないエキセントリック』を見せることは、

 これまで、一度もなかったので、

 クラス内のザワザワは、とどまることなく加熱していく。


「あの『顔面偏差値48』と茶柱が……え、ほんとうに?」

「いやいや、そんなわけ――」


 などと、動揺が止まらない教室。

 そんな喧噪を、

 教室の後方を陣取っている彼女――

 紅院美麗がブッタ切る。


 勢いよく、バンッと、机をたたきながら立ち上がり、




「ツミカの奇行に反応するのは、ただのバカ! 以上!」




 よく通る『ハリのある声』でそう叫ぶ。

 直後、シーンとする教室。


 これで空気が変わるかと思いきや、

 しかし、茶柱は、続けて。


「ダーリンみたいな変態を好きになる女とか、他にいないと思うから、心配はしてないけど、一応、ちゃんと言っておくにゃ。この変態さんは、ツミカさんの所有物だから、狙っちゃだめだからにゃぁ」


 その、ガチくさい発言を受けて、

 クラスメイトたちは、

 また、一様にザワザワっと騒ぎ出す。


 そんな騒ぎを収束しようと、

 トコが、


「ツミカ! ちょっと、こっちこい!」


 そう言いながら、

 茶柱を教室の前のドアから、外へと連れていき、


 紅院が、


「閃壱番! あんたは、こっち!」


 そう言いながら、教室の後ろのドアから、センを外へと連れていく。


 その後、残された黒木が、


「気にしないでください、みなさん。さっきのアレは、いつものツミカさんのアレでしかないので」


 と、クラス内の後処理を担う。






 ★






 閃を連れ出して、

 中庭まできた紅院が、


「なに? あれ、どういうこと?」


 そう問いかけると、

 センは、面倒くさそうな顔で、

 頭をポリポリかきながら、


「今朝、怒らせたから、その腹いせだろ。とことん性根が腐っているな、あの女。きらいだわぁ」


「……怒らせた? 何をしたの? ていうか、昨晩は何があったの? 昨日の夜、ツミカに電話してみたけど、一向に出ないし、朝、電話した時は出たけど、なんか、変にテンションが高いだけで、何も教えてくれないし」


「あー、なんていうか、その……色々あって、あいつと、一緒にGOOを倒した」


「……えっと……え? どういうこと?」


「まあ、詳しいことは、あいつから聞いてくれ。あいつが言わないなら、俺も言う気はない。……みたいな感じの結構デリケートな問題だっていう、それだけの話だ」


「……」


 紅院は、数秒黙ってから、


「一つだけ、聞いていい?」


「別にいいよ。聞くだけなら、いつでも、なんでも。……答えるかどうかは、また別問題だが」


「トコの呪いの事は……聞いているわよね?」


「ああ、聞いているよ。本人からも聞いたし、茶柱からも……軽く聞いた。それが?」


「その呪いが……昨夜、急に解けたらしいのだけど、なぜだか分かる?」


「……」

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