70話 期間限定で全知全能のセンエース。

 70話 期間限定で全知全能のセンエース。


 ――その日の夜、

 ロイガー瞬殺後、

 前回と同じく、例の喫茶店に訪れた黒木は、

 机に座っている『セン(仮面つき)』を見ると、


「……一応、顔を見せてもらっていいですか?」


 同じ流れを経て、

 彼女に、自分の存在を信じさせたセンは、


「あらためて、状況を説明させてもらう。まず――」


 最低限の現状説明を付け加えてから、


「――今日のところは帰っていい。……が、明日以降の夜は、全部、俺にくれ。とにかく、全力でアイテムを探す。出来れば、昼間に、たっぷり寝ておいてくれ」


 前と同じく、黒木を返したセン。


 天を仰ぎ、


「はぁ……同じ日を繰り返すのって……精神的にしんどいな……」


 ボソっとそうつぶやいた。


 ――その直後のこと。

 カズナが店に入ってきて、

 センのトイメンに腰かけ、


「陛下、ここからどうなさるおつもりで?」


 『判断の全て』をセンに丸投げしているカズナは、

 まだ精神的に余裕がある。


 『思考停止して、手足に徹する』

 それは、彼女の性分にもあっていた。

 だから、まだ耐えられている。


 しかし、それも、いつまで持つか……


「とりあえず、茶柱は放っておく……そうすれば、明日、普通に、茶柱が俺に襲撃してくるだろう」


「ツミカが仕掛けた爆弾はどうしますか? ご命令いただければ、捜索し、解除しておきますが?」


「放っておいていい。爆弾は、俺がゴネた時用の保険。俺がゴネなければ、使われることはない。明日は、あいつの言う事を、黙って聞いてやるさ」



 ★



 ――翌日の朝、


 例の喫茶店で一夜をあかしたセンは、

 マスターが淹れてくれたコーヒーをすすりながら、

 携帯が鳴るのを待っていた。


(……そろそろのはずだが……)


 と、『2周目』の時の事を思い出しながら、

 時計をチラ見していると、


「……きたきた」


 そこで、

 軽快にスマホが鳴り響いた。


 表示された番号は、間違いなく茶柱のもの。


「はい」


 電話に出ると、

 茶柱は、


『どちら様ですかにゃ?』


 などとぬかしてきたので、


「俺は今、お前が、『俺を呼び出そう』と画策している喫茶店にいる。さっさと来い」


『……』


「あ、そうそう……爆弾のスイッチからは手を離せ。それを使う必要はない。俺は逃げも隠れもしない」


『……あんたは、もしかして、全知全能なのかにゃぁ?』


「全知全能だったら、お前の対応ごときに頭を抱えたりしない。いいから、さっさと来い」


 そう言って、センは電話を切った。



 ★



 ――それから五分も経たないうちに、

 茶柱は、喫茶店に入ってきた。


「まったー?」


 先に席についていたセンに対し、

 茶柱は、片手を上げながら、

 そう声をかけてきた。


(そのセリフ……はじめて正常な使われ方をした気がするな)


 などと心の中で思いながら、


「昨日の夜から、ずっと待っていたよ」


 と、嘘偽りない言葉を並べていく。


 茶柱は、そんなセンの言葉に対し、

 数秒だけ頭を使ったようだが、


「……それで? あなたは、どちら様なのかにゃ?」


「センエース。未来人だ。5日後の22日からタイムリープしてきた。タイムリープした回数は、今回で3回目。その間に、お前とは、何度も話している。時間がもったいないから、余計なボケを挟まず、黙って俺の話を聞け」

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