20話 鬱陶しい展開。


 20話 鬱陶しい展開。


「……これは……なんか……わからんが……だいぶ、鬱陶しいことになる予感が……ビンビンする……」


 何がどうとは言えない。

 本当に、これまでと違うのか、

 その辺の詳細は一切不明。


 だが、センは、


「……勘弁してくれよ……頼むから、鬱陶しい展開にはならないで……」


 必死で、天に懇願する。

 しかし、いつだって天は、センに対して無情。


 それが、世の常。

 センエースの奇妙な冒険は、まだまだ加速する。




 ★




 何かが違う気がする。

 そう感じながらも、

 センは、とりあえず、

 いつも通り、黒木に協力要請をかけようと電話をかけた。


 この時間であれば、いつも、確実に電話に出てくれた。

 なのに、




『おかけになった電話番号は現在――』




 という、『出られません』のコールがかえってきた。


「えぇ……おいおい、マジでか……」


 これまで、黒木が電話に出なかったことは一度もない。

 1000回前後やってきて、一度もなかった。


 もちろん、毎回、息遣いや言葉の構成に、じゃっかん、ほんの少しだけ『違い』がみられたが、しかし、『出ない』ということはなかった。


「……ぇえ……なにこれ……」


 『これまでとは違う』という『しんどさ』を感じながらも、

 とりあえず、センは準備をして、



「……『学校にもきていません』とか、そういう、『何がなんだか』な謎展開は勘弁してくれよ……いや、マジで……フリとかじゃなく……」



 最悪の未来予想図に戦々恐々としながらも、

 センは、学校へと向かった。




 ★




(……よかった……いた)


 学校にたどり着いて、教室に向かうと、

 そこには、すでに、K5の面々が、定位置である『後ろの席』で集まっていた。


 しかし、


(……なんか……いつもと、雰囲気が、全然……)


 これまでの『初日の朝』は、

 『紅院が遅刻していないのは珍しい』だの、

 『茶柱は、相変わらず頭がおかしい』だの、

 そういう、バカみたいな会話が行われていたのだが、

 しかし、今日は、


(……ええ、なに? なんか……完全に、お通夜状態……)


 K5の面々は、全員、

 神妙な面持ちで、

 どんよりと暗い雰囲気をかもしだしていた。


 あの茶柱ですら、

 今日だけは、重たい面持ちで、自分の席に座っている。



 どんよりと重たい雰囲気の中、

 トコだけは、そのことを気にしているようすで、

 チラチラと、他のK5を見渡しつつ、

 ふいに、


「ちょっと……屋上、いこか」


 そう言って、立ち上がった。

 それに続く、他のK5たち。


 彼女たちが教室を出たところで、

 それまで、一緒に黙っていたクラスメイトたちが、


「え? なに? なんかあった?」

「雰囲気、やばいよね?」

「どうしたんだろう?」


 と、K5たちの様子がおかしいことについて話あっている。


 そんなクラスメイト達を残して、センは、


(……完全に……鬱陶しい展開になる予感……)


 心の中で、深いため息をつきながら、

 『トイレに行く感』を出しつつ、

 教室を出ると、周囲に誰もいないことを確認してから、

 瞬間移動で、屋上に移動する。


 死角に潜んで彼女たちを待っていると、

 二分後に、彼女たちが屋上に出てきた。


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