23話 『どこかの誰か』の上位互換。


 23話 『どこかの誰か』の上位互換。


 時空間移動でロイガーの眼前から逃亡したトウシは、

 校舎の中を駆けずり回っていた。


(……何か……アイテム……なんでもええから、とにかく、この状況を打開できる可能性のあるアイテム……っっ!)


 魔導書は読み込んであるので、

 夜中の時空ヶ丘学園に、特別なアイテムがわくことは分かっている。


 自作の携帯ドラゴンには、アイテム探索用のサーチ機能も搭載してあるので、

 どこかの誰かのように、黒木をダウジングマシンにしなくとも、

 自力でアイテム探索は出来る。


 その点だけを取ってみても、

 田中トウシは、『どこかの誰か』の上位互換だと言えた。



「あかん! ちょっとした強化パーツなんか、この状況では、なんの意味もない!!」



 豪速で駆けずり回っている間に、

 トウシは、宝箱を二つ見つけたのだが、

 しかし、どちらにも、レアリティコモンの強化パーツしか入っていなかった。


 現状で、攻撃力が1パーセントや2パーセントアップしたところで意味はない。

 煮えたぎるマグマにスズメの涙を投下するようなもの。



「もっと、『根幹のシステム』ごと底上げするようなスーパープライマルエンシェントレジェンドアイテムやないと、ロイガーは殺せん! 頼むから見つかってくれ! アイテム運に頼るようになったら終わりなんは分かっとるけど、もう、現状、それ以外に方法がない!!」



 トウシは、必死になって、アイテムを探し続けた。

 ロイガーとの実力差をひっくり返すような一発逆転のアイテムなど、

 『存在するわけがない』とは思っているものの、

 しかし、諦めることなく、トウシはがむしゃらに、

 アイテムを探しつづけた。


「くそ! また、コモンの強化パーツかい! いらんねんっっ!!」


 宝箱を蹴り飛ばしながら、頭をかきむしるトウシ。


 ――と、そこで、






「――私に対抗する策は見つかったか?」






 背後から声をかけられて、

 トウシは、ビクっと肩を上げた。


 ソロリと、背後を確認してみると、

 そこには、

 茶柱の生首をもっているロイガーが立っていた。


 ロイガーに頭を掴まれている茶柱は、

 死んだ魚の目で、トウシに対し、


「脊髄反射で逃げたのかと思ったけど、アイテム探索をしていたとは、驚きだにゃ。この覚醒ロイガーは、強すぎるから、何をしても無駄だと思うけどにゃぁ」


 と、完全なる諦め口調でそう言った。

 首だけになっていながら、まだ生きているという、

 その奇異に対して、トウシは、


「……うーわ……えぐいぃ……」


 こみあげてくるものを感じたが、

 どうにか飲み込んで、

 ロイガーに、


「……ほ、他の……女はどうした?」


 そう尋ねると、


「貴様が逃げたから、こうなった」


 ロイガーは、茶柱の首を掴んでいない方の手で、

 パチンと指をならした。


 すると、トウシの目の前に、

 三人の死体が出現する。


 空中に出現してすぐ、ドサドサっと、雑に地面へと落ちていった。

 精気はいっさい感じない。

 紅院と黒木は首から上がない。

 トコの頭は残っているが、額が貫かれている。

 三人とも、命はもうない。

 完全に死んでいる。

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