22話 飛び交う無敵宣言。


 22話 飛び交う無敵宣言。


「ここで引いたら、俺は、一生、あんたを夢見るだけに終わる気がするから。時には、理論をシカトして、感覚と感情にオールベットすべき。それが俺の考え方だ」


 ――なんて、そんな、言葉に身をゆだねながら、

 センは、


「スーパーセンエース。もしかしたら、俺は、あんたのパチモンかもしれない。けど、もし、俺がパチモンだったとしても、だからって、『俺の全部』に価値がなくなるわけじゃねぇ。仮に俺がパチモンでも、だからって、劣化版だとは限らねぇし、俺の感情の全部が、あんたのコピーってわけでもねぇはずだ。なんなら、パチモンが本物を超えたっていいじゃねぇか」


 センは、とびっきりの覚悟を並べてから、



「いくぞ、スーパーセンエース。あんたは、俺を『超えている』のかもしれないが、けれど、今の俺より強い程度で図に乗るなよ。俺は、俺より強い程度の雑魚に負けない」



 『あまりにも無敵が過ぎる決め台詞』をたたきつけると、

 センは、そのまま空間を跳躍して、

 渾身の閃拳を、スーパーセンエースに叩き込む。


 スーパーセンエースは、センの拳を、

 サラリ、指一本で受け止めると、


「――『お前より強い』という程度で図に乗るほど、俺の質は粗悪じゃない」


 そう言い捨ててから、

 まっすぐな目で、


「言っておくぞ、パチモン。仮に、お前が、俺より強くなったとしても、だからって、俺の勝利が揺らぐことはありえない。なぜだか、教えてやろうか? ――俺は、俺より強い程度の雑魚には負けないからだ」


 ハッキリとそう言い切ると、

 スーパーセンエースは、センの顔面に向かって、


「閃拳」


 とびっきりの一発をブチ込んだ。


「ぐべけっ!!」


 肉体に大きなダメージは入らなかった。

 顔の骨が普通に陥没して、ヤバい量の鼻血が出たが、

 しかし、体の損傷は、そこまでだった。


 問題なのは心。

 魂の深部にズガンと深くきざまれたメッセージ。


「うぉえ……っ……」


 反射的に嘔吐。

 体の全部が逆流しているみたい。



「……閃拳じゃなくて……逆気閃拳じゃねぇか……」



 文句をいうセンに、

 スーパーセンエースは、シレっと、


「なんだ、その目。もしかして、逆気閃拳を、閃拳と略して使ったことを、謝ってほしいのか? OK。ごめんなさい。これからは、ちゃんと、正しく必殺技名を叫びます。――これで満足かい、ブタ野郎」


「謝罪の真心が足りねぇよ! 両手と額を地面につけて、俺のクツをナメながら、金品を差し出せ! それが本当の誠意だ、バカ野郎!」


 センは、自分を鼓舞するように、

 大声で怒鳴りながら、スーパーセンエースに殴り掛かる。


 かなり気合を入れた一発だったが、

 当然のように、指一本で防がれる。


 スーパーセンエースは、センの攻撃を、

 この上なく軽やかに受け止めつつ、

 真摯な顔で、


「アダムに一発をカマしてみせた……その器量はすさまじいが、しかし、『それが出来るだけの器がある』と理解していれば、対応は可能。これは油断どうこうの話ではなく、『初見殺しは、初見しか通じない』という、単純なメカニズムの話」

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