37話 だいたいのことが、基本的には苦手な無能ぶり。


 37話 だいたいのことが、基本的には苦手な無能ぶり。


「今、心の中で『使えないな、こいつ』と思いましね。取り消して、謝罪してください」


「ついには、心の中で思うだけでも謝罪を要求されるようになったか……もう、お前との関係も正式に終わりだな。おつかれさん」


 などと、軽口をたたきつつ、

 センは、心の中で、


(飛び道具なしのルールなら……あるいは、『飛び道具を使うまでもない』とナメ腐られているほど『無警戒』の状況を作れれば、カウンターの投げ飛ばしで、ワンチャンある可能性も……ゼロじゃない……)


 頭の中で、武道大会のプランを練っていく。


(……ラピッド兄さんのアレコレを見る限り、どうやら、この世界の上位者は、余裕で『飛べる』っぽい……空から弾幕を張られたら終わり……それをさせないよう、対戦相手には、俺のことを、とことんナメてもらう必要がある……)


 『安易に組み合って』くれさえすれば、

 どうにかできる可能性もなくはない。


 ステータスはともかく、体術だけで言えば、センのスペックはハンパない。

 それは、この第二アルファにおいても同じ。


 ただし、ステータスが低すぎるため、

 絶対的に『会心の一撃』を叩き込む必要がある。


 それには『相手のスキ』が絶対に必要。


(大会の形式によっても、いろいろと変わってくるな……『まるまる上位者しか出ないイカれた大会』で、かつ『何回戦もある』となると、さすがに、いろいろと厳しいが……さてさて……)



 ★



 ――役所からの帰り、

 その足で、『バロール杯』へのエントリーをすませたセンは、

 受け取った資料を読み込みながら、心の中で、


(……バトロワ形式の一次予選で数を一気に減らして、ダンジョン攻略系の二次予選の結果でトーナメントを作成。『ゼノリカの天上』に属する者はシードなので、予選には参加していない……ふむふむ……)


 ゼノリカという世界政府は、

 大きく『天上』と『天下』に分かれており、

 『天上』に属する者は、すべてにおいて別格扱いを受けている。


 この世界では神のような扱いを受けている、まさに雲の上の存在。


(本選では、3回勝てば優勝……つまり、『予選を勝ち残った超人』や、ラピッド兄さんのような『天上』のメンツを相手に3回勝つ必要があるのか……いや、厳しいな……3回かぁ……)


 予選はともかく、

 本選まで残り、かつ、決勝まで残った場合、

 どうあがいても、『警戒』はされてしまう。


(……『偶然勝ち残ってしまった』というのを、全力で演出する必要がある……が、俺には、『その手の画策』を『クラスマッチで、盛大に失敗した』という血塗られた歴史が刻まれている……)


 盛大に失敗した結果、

 『エースガールズ』などという『イカれた組織』が発足されるという、

 とんでもなくエグい事態に陥ってしまった。


(俺は、この手の演算が苦手なんだよなぁ……別に頭よくないから……つぅか、マルチタスクは専門外なんだよなぁ……まあ、そもそも、特に専門といえる分野はないんだけれども……)


 自分の低スペックぶりに頭を抱えるセン。


 ――ただ、自分のザコっぷりを嘆いてばかりいても、

 一歩も前に進めないことを、彼は知っているので、

 グっと顔をあげて、世界を睨みながら、


(まあ、でもやるしかねぇ……ノンビリ二か月後に帰って、世界が終わっていました、銀の鍵も消滅しています……そんな展開になったら、目もあてられねぇからなぁ)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る