36話 黒木様の天才性がキラリと光る。


 36話 黒木様の天才性がキラリと光る。


「あなたなら、どうにかなるのではないですか?」


「300億も出る武道大会ってことは、この世界の強者が集まるってことだろ? ラピッド兄さん級が出場するとなれば、ちょっとなぁ……」


 そんなセンと黒木の会話に、

 役所の人がピクっと反応し、


「ちなみに、賞金のケタが『億』を超える武道大会には、確実に、天上の御方々も数名は参戦されるので、優勝するのは不可能です。私の『先の発言』は、あくまでも、今、この場で、パっと思いつく『大金を得られる方法』を口にさせていただいただけで、真意としましては、『大金を稼ぐのは、それだけ難しいことなので、素直に二か月待ってはいかがでしょう』ということをお伝えしたかっただけでございます。あえて、もう一度言いましょう。天上の方々に勝つのは無理です。第一アルファ人は、間違いなく、最高峰の資質を持つ有能な人種ですが、しかし、天上の方々は、また、別格なのです」




「優勝するのは不可能……ねぇ」



 センは、軽くムカついている顔で、


「自分で『無理そうかも』と思うだけなら、特にストレスでもないが……他人から、『お前じゃ無理』なんて断定されると……バキバキにイラついて、普通に反発したくなるねぇ……」


 そう言いながら、センは、両手の関節をボキボキとならし、


(……これだけ整った世界なら、他にも、金を稼ぐ方法は、何個かあるだろうけど……どうせ、どれも、エゲつない難易度ばかりなんだろう……となれば、多少なりとも可能性のある『武道大会』に挑む方が、まだ合理的か……可能性はだいぶ低そうだが……ルール次第では、ワンチャンありえなくも……なくはない……ま、逆に、ルール次第で、手も足も出ない可能性もあるが……)


 『一回戦は、腕相撲で力比べだ!』みたいな展開になった場合、

 『センエース完全終了のお知らせ』が鳴り響くこととなる。


 素のステータスが、『病人級』のセンが、

 『ド直球の力比べ』で、第二アルファの猛者に対抗できるわけがない。


 そういう領域になってくると『あきらめない』とか『がんばる』とか、そんな精神論でどうにかなる次元の話ではないのだ。


(……黒木がいるから、『頭を使って稼ぐ』という手段も、なくはないんだろうが……)


 などと、心の中でつぶやきつつ、

 チラっと、隣にいる『メガネ女子』に視線を送るセン。


 『頭脳系の天才である黒木に何かビジネスを当ててもらう』、

 などといったことを、一応、考えてはみたものの、


(……いくらなんでも、一週間で300億を稼ぐビジネスを、この場でパっと思いつけってのは無茶な話……)


 などと思いつつ、一応、

 センは、黒木の目をまっすぐに見つめ、


「……お嬢様……『一週間以内に、300億を稼げるビジネス』を、この場でパっと思いついたりできませんでしょうか?」


 全力で下出に出ていくセンに対し、

 黒木は、とことん冷めた顔で、


「もし、そんなものを思いつけるのであれば、第一アルファで実践しています。私は、情報をインプットするのは得意ですが、『革新的アイディアが湧き出るスーパーセンス』は持ち合わせておりません」


「……」


「今、心の中で『使えないな、こいつ』と思いましね。取り消して、謝罪してください」


「ついには、心の中で思うだけでも謝罪を要求されるようになったか……もう、お前との関係も正式に終わりだな。おつかれさん」



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