35話 300億かせげるかも!! 30年あれば!!!


 35話 300億かせげるかも!! 30年あれば!!!


「わーい、二か月が1万年に短縮だー、うれしー、いぇい、いぇい、いぇーい、きゃっほー」


 と、死んだ目の棒読みで言い捨てる。


 そんなセンに、役所の人は、


「お二人は、第一アルファ人ですので、おそらく、相当なポテンシャルを有しているものと思われます。その才能が、『短期間で開花するもの』であれば、300億稼ぐために必要な時間は、相当に短縮されるかと」


「才能が短期で開花したとして……300億稼ぐのに、どのぐらいの日数がかかる感じすか?」


 そんな黒木の質問に、

 役所の人は、数秒ほど悩んでから、ぽつりと、


「……30年もあれば、もしかしら――」


「詰んだぁああああああああああああああああああ!」


 天を仰いで、地獄を叫ぶセン。

 『すぐにでも年収10億に届きうる』という、その『可能性』は、

 普通に考えたら僥倖(ぎょうこう)以外の何物でもないが、

 しかし、今のセンにとっては、単なるゲームオーバーでしかない。


「終わったぁ! ごめん、人類!! さよなら、バイバイ!」


 と、完全に『頭おかしい人』になったセン。

 役所の人は、完全に『ヤバい人』を見る目になっている。


 そんなセンの隣で、

 黒木は、冷静に、


「何か、手っ取り早く、大金を稼ぐ手段などありませんか? できれば、一週間以内に帰りたいんです……いえ、『できれば』ではなく『ものすごく』、一週間以内に帰りたいんです」


 そう尋ねると、

 役所の人は、ちょっと考えながら、


「……300億ほどの大金が短期で稼げる手段……となると……パっと思いつくのは、『上位の武道大会』などの『賞金』でしょうか。最高ランクの大会だと、100億を超えることも、たまにありますし……そう言えば、明後日に開催される『バロール杯』は、賞金が300億ぐらいだったと思いますよ」


 その発言に対し、

 センは、天を仰いだまま、

 ボソっと、


「……武道大会……ねぇ……」


 そうつぶやいた。

 その表情に『希望の色』は少ない。

 なぜなら『可能性』を感じるよりも、『絶望感』を先に覚えたから。


 ここまでのアレコレで、この世界が『異常にハイクラス』であることは理解できている。

 そのため、安易に『やった! 300億、稼げるかも!』とはならない。


(全世界最強格の『ポテンシャル』を持つ者の素質が花開いて、ようやく年収10億……そういう金銭レベルの世界における『300』億の賞金は、上位者の視点でも、間違いなく、かなりの大金……となれば、出場するのは、この世界でも最高格の存在ばかりになるのは自明……さすがに、ラピッド兄さん級がゴロゴロいるとは考えにくいが……匹敵する実力者がひしめきあう可能性は十分にある……)


 しぶい顔をするセンに、

 黒木が、


「あなたなら、どうにかなるのではないですか?」


 と、無邪気な質問を投げかけてくる。

 センは、しぶい顔のまま、


「300億も出る武道大会ってことは、この世界の強者が集まるってことだろ? ラピッド兄さん級が出場するとなれば、ちょっとなぁ……」


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