34話 いぇい、いぇい、きゃっほー。
34話 いぇい、いぇい、きゃっほー。
――その後、実際、『役所』にいってみて、
詳しく話を聞いたところ、
第一アルファに帰れるのは、
はやくて、二か月後とのこと。
「……いや、長ぇな……」
右手で頭を抱えてタメ息をつくセン。
「どうにか、もっとはやく帰れないすか?」
尋ねてみると、
「第一アルファにゲートを開くとなると、相当のエネルギーを使うからねぇ。他の世界はそうでもないんだけど、第一アルファは特別だから……そうポンポンと開くことは出来ないよ」
「第一アルファって、何がそんなに特別なんすかね? スペックが最高とは聞いたんすけど、それ以外は何も教えてくれなくて」
「時間がズレているんだよ。世界と世界の時間というのは、ズレているのが基本なんだけど、誤差であることが大半。しかし、第一アルファは、かなりズレている。そのズレによって生じる波動の緩衝(かんしょう)に、かなりの労力を必要とするんだ。この辺の仕組みであったり、手順であったり、必要なマジックアイテムの詳細であったりは、もちろん、教えられない。超々々機密事項だ」
「……ほう、ちなみに、ズレってのはどのぐらい? 例えば、こっちでの一年は、第一アルファだと一日、みたいな、そんな感じ?」
「今の時期だと、そこまではズレないよ。特定の周期によっては、それ以上のズレも起こり得るのが、第一アルファの厄介なところではあるけれど、今の時期だと……まあ、数時間程度の差かな」
「……なるほど」
返事をしながら、センは、心の中で、
(……やばいな……二か月後となると、帰ったころには、銀の鍵が、確定で消えている……)
ちなみに、現状『銀の鍵』は手元にない。
当然、ここにくるまでは、ふところに所持していたのだが、
気づけば、なくなっていた。
図虚空も銀の鍵もない、裸の状態。
それが、今のセンエース。
(……どうする……)
と、悩んでいると、
そこで、役所の人が、
「すぐに帰れる方法もなくはないけれど……」
と、言い出したため、
センは、前のめりになって、
「その方法とは?!」
尋ねると、
役所の人は、ニコっと微笑んで、
「300億エネほど払っていただければ、すぐにでもゲートを開かせていただきますよ」
などと、そんなことを口にした。
「……さ、300……億……」
『単位』もつけて言われたので、
『ジンバブエドル的な変換』が出来る特殊な数字でないことも確定している。
直球の、クソ大金。
『200000エネ』が『一か月分の生活費』であることから、
『30000000000エネ』の価値が、すぐに頭の中で計算できた。
(……ふ、ふざけやがって……)
絶句するセンの横から、
黒木が、
「ちなみに、普通、それだけ稼ぐのに、どれだけの時間がかかりますか?」
「一般人の人生100回分ぐらいなので……まあ、1万年ほどあれば、どうにか……」
その発言を受けて、センは、
「わーい、二か月が1万年に短縮だー、うれしー、いぇい、いぇい、いぇーい、きゃっほー」
と、棒読みで言い捨てる。
その目は、完全に死んでいた。
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