33話 第一アルファに関することなんか知らん。
33話 第一アルファに関することなんか知らん。
「根本の話をしよう。さっきのニーチャンの話を聞く限り……この世界におけるセンエースって神が『ただの偶像』で、『実在はしない』って点だけは、よく理解できた。実在しないものが転生したりしねぇだろ。これが、すべての答えだ。証明するまでもなかった」
「わかりませんよ。もしかしたら、私が創作したソンキーが、どこかの世界に転生しているという可能性だって、ゼロではありません」
「可能性『だけ』の話をしだしたら、それこそ『ゼロに確定される方』が圧倒的に少ない。コンマの下にゼロをいくつつけてもいいなら、なんにだって可能性はある。そんな無限の話をしても意味がねぇ」
「意味がないとは思いませんが、そこそこ不毛であるという点に関しては同意しますよ。今の私たちには、答えにたどり着くための手段がないので」
★
センと黒木は、ダラダラと会話を交わしつつ、
1時間ほど、周囲を探索してから、
『愚連』と呼ばれている『自警団っぽい集団』の屯所(とんしょ)に向かい、
そこにいたゴリマッチョに、『ラピッドからもらった身分証明書』を見せつつ、
第一アルファからの漂流者であることを伝えると、
「じゃあ、役所に行って、書類を書いてきて。もう、すぐそこだから」
そう言って指さされた場所を横目に、
センは、ゴリマッチョに、
「書類を書いたら、すぐに帰れるのかな?」
と尋ねると、
ゴリマッチョは、首を横に振りつつ、
「すぐは無理じゃないかな。第一アルファは、少し特殊だから、実際に帰れるまで、数か月ほどかかる可能性がある……とは聞いている……のだが、正直、具体的なところは知らない。第一アルファからの漂流者はめったにいないからな」
「……あ、そうすか」
そこで、ゴリマッチョは、後ろを振り返り、
「パルティン、お前、確か、第一アルファからの漂流者に会ったことあるって言っていたよな? その漂流者は、どのぐらいで、元の世界に帰れたんだ?」
と、同僚に声をかけた。
机で事務処理をしていたパルティンは、
「知るか。警邏(けいら)中に一回、会ったことがあるだけで、その後、どうなったかすら知らん。興味もない」
と、しんどそうにそう応えてから、
すぐさま事務処理に戻る。
ゴリマッチョが、苦笑いを浮かべて、
「役に立てなくて悪いな。俺らは、ゴリゴリの実働部隊だから、本格的な事務職の連中みたいに、細かい法規までは抑えていないんだ。いや、もちろん、俺らにだって、ご覧の通り、事務処理業務はあるわけだから、その辺も一通り知っておくべきなんだが、鍛錬と仕事が忙しすぎて、そっちにまでは、なかなか手が回らなくてな……今も、処理しなければいけない書類がバカみたいに多くて……これでも、かなり簡略化されたという話だが、しかし――」
と、愚痴モードに入ってしまったので、
センは、
「あ、はい。OKです。役所いってきます。あざっした!」
と、軽快に流しながら、
愚連の屯所をあとにした。
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