36話 素ロイガーなど眼中になし。


 36話 素ロイガーなど眼中になし。


「――イヤなもんをイヤやっていうてるだけじゃ、くそったれ! あいつらを殺されるんはイヤなんじゃ、カス、ごらぁ! おどれごときチ〇カスの成りそこないは、宇宙一の美少女であるあたしのお願いを、黙って聞いとけばええんじゃ、あほんだらぁ! どうじゃい! 実にワガママお嬢様らしいやろう! 悪役令嬢感がエゲつないやろがい! これで、満足か! ブタ野郎!」


「非常に不愉快」


 ロイガーはそう言うと、

 トコから視線をそらしつつ、


「今から、貴様以外を全員殺す。徹底的に痛めつけて、ふみにじる。そのあとで、貴様を殺す」


 そう宣言すると、

 ――一般人『南雲ナオ』を指さし、



「まずは、あそこにいる『カス』から殺す」



 その悪逆非道な殺戮宣言に対し、

 トコは顔を真っ青にした。


 どうにかして止めようと頭を回すが、

 しかし、トコの実力ではどうしようもない。


 深い絶望に包まれた、

 そのタイミングで、




(……結局……解決策は、なんも見つからんかったぁ……あぁ……どうしよう……マジで、どうしよう……)




 突然登場したのは、

 見覚えのない男子高校生。

 なぜか、頭を抱えていて、心底苦しそうな表情をしている。


 そんな彼の姿を見つけたトコは、


「え……誰……」


 と、疑問符を口にした。


 ちなみに、トウシは、今日、学校にいっていない。

 つまり、主体性遠足の話し合いに参加していないので、

 『同級生に興味がないK5』は、

 トウシの顔など、当然覚えていないのである。


 そんな彼女の、当たり前の疑問を受けて、

 トウシは、


「名前は田中トウシ、お前らのクラスメイト……いや、まあ、ワシが誰かとか、そんなん、どうでもええ……」


 しんどそうな顔で、そう吐き捨てる彼に、

 トコは、


「……あんた、なんで、こんなとこにおんねん! アホかぁ!」


 と、純粋なイライラを叫んだ。


 そのイライラに対し、トウシは、心の中で、


(さすがに、おどれよりはアホちゃうけど……実際、思ったよりも賢くなかったなぁ……ワシなら、この不可能を可能にできると思っとったんやけど……結局、ブレイクスルーにはいたらんかった……情けないわぁ)


 タメ息まじりに、そうつぶやきながら、

 携帯ドラゴン『エルメス』を召喚する。


 その様を見て、

 彼女たちは、初回と同様の驚き顔を見せた。

 今回に限って言えば、茶柱も、同じように驚愕を表情に出している。


 そんな彼女たちの驚愕をシカトして、


(……一応、最低限の準備はしてきたけど……この程度の準備が通用するかなぁ……不安しかないなぁ……)


 心の中で、ぶつぶつ、そう言いながら、

 トウシは、

 サクっと、素ロイガーに向かって、


「異次元砲」


 強力な照射をあびせかけた。

 素ロイガーなど、今のトウシの敵ではない。

 一瞬でノックアウト完了。


 その光景を見ていたK5の面々は、

 全員、唖然としていた。


 誰もが驚愕している中で独り、

 張本人のトウシだけは、冷めたツラをしていた。


(素ロイガーを殺せるかどうかはどうでもええ。重要なんは、覚醒ロイガーの方……さて……ワシの『あがき』は、どこまで通用するか……)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る