37話 頭脳系デスゲーム。


 37話 頭脳系デスゲーム。


(素ロイガーを殺せるかどうかはどうでもええ。重要なんは、覚醒ロイガーの方……さて……ワシの『あがき』は、どこまで通用するか……)


 トウシが身構えていると、

 ロイガーの死体が、ドクドクと強く脈打ちはじめた。



(……覚醒ロイガーという異常事態は、前回の世界線だけの特別で、今回は登場しません……という流れを、一瞬だけ期待したんやけど……普通に出てくるみたいやな……はぁ……)


 心の中でため息をつきつつ、

 トウシは、軽く肩をまわしながら、

 上半身の流れを整えていく。


 その間に、

 ロイガーの全身が、グニャグニャとうごめいて、

 ついには、


「ブハァ……」


 軽く深呼吸をしてから、



「……ウギ……ギギギ……グググ……ふぅ……ふぅ……はぁ……」



 何度か、深呼吸をして、


「……ふぅ」


 自身の全てを整えると、


「……また会ったな、田中トウシ」


 そんなことを口にした。


「……え、おぼえとるん?」


「覚えているわけではない。理性と同時にメモリを植え付けられただけだ」


「……ああ、そう」


「言っておくが、もう二度と、過去には逃がさない。私が全力で次元ロックを張れば、貴様ごときのタイムリープを封じることなど容易」


「……ええ、うそぉん……」


 言葉こそポップだが、

 心底から愕然とした顔をしているトウシ。

 『最悪、過去に逃げればいい』という切り札が死んだことのショックはかなり大きい。


「……逃がしてくれてもええやん……」


 なんの意味もない愚痴をはくトウシに、

 覚醒ロイガーは、たんたんと、


「無限ループに付き合う気はない。言っておくが、貴様の手法ならば、間違いなく、私の次元ロックで対応できるからな。無意味な希望は持たない方が賢明だ」


(……ん? 『ワシの手法なら』やと? その言い方やと、まるで、『他の方法やったらいける』……とも取れるけど……)


 などと、覚醒ロイガーの言葉の裏を読んでいると、


「さあ、それでは、死のうか……もう、貴様にとれる手段はない」


 そんなことを言って、ゆっくりと、近づいてきた。


 トウシは、軽くムっとした顔で、


「タイムリープで逃げられんのは痛いけど、それ以外に方法がないなら、ここまできとらんわい」


 そう言いながら、



「DIS321198固有領域、展開」



 準備してきた奥の手をさっそく披露する。

 トウシの宣言の直後、

 トウシを中心として、

 半径500メートルぐらいの、

 ドーム状の結界が出現する。


 当然、その結界の中には、

 ロイガーとK5も収まっている。


「……固有領域か……特殊な神字も刻まれている様子……何を刻んだ?」


「この固有領域に刻まれているのは『頭脳系デスゲーム』。お互いに平等なルールの頭脳系ゲームで競い合い、負けた方が死ぬ。この領域内において、単純な暴力は無効化される。ワシを殺したかったら、ゲームに勝つしかない」


「くく……カワイイ抵抗だな……いいだろう。受けてやる」


 鼻で笑ってから、


「ルール型の領域……展開したのが貴様側である以上、『何をルールとするか』は、当然、私が決めることになる。そこは把握しているか?」


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