35話 見つからない答え。


 35話 見つからない答え。


「え、ワシ、なんで、無駄にカッコつけたん? ……え、ちょ待って、ほんま、勘弁してくれや、なんの意味があんねん、その行為にぃいいい……っ!」


 自分自身に対する怒りが沸き上がって止まらない。


 先ほどのトウシは、ほとんど、脊髄反射的に、全力でカッコつけただけ。

 そこに意味はない。

 完全に、ただの見栄。

 もっといえば、見栄ですらない、クソみたいな反射。


 気づけば、顎を上げて、ドヤ顔で、カッコつけてしまっていた。

 なぜ、そんなことをしたのか、

 そこに関しては、自分でも、本当にわからない。


 気づけば、ペラペラとカッコつけていやがったのだ、この口は。



「どうしようぉ……いや、どうしようもないやろぉ……夜までに解決策とか見つかる気がせぇへんのやけど……いや、まあ、最悪、見つからんかっても、タイムリープしたら、時間は多少、稼げるけど……でも、後遺症とか、大丈夫かなぁ……仮に、タイムリープの後遺症で脳細胞が破壊されるという結果になった場合、唯一の武器である知性が削れていくんよなぁ」



 田中トウシの生命線は、そのズバ抜けた頭脳だけ。

 そこが失われたら、神話生物たちに対抗する手段はなくなる。


 『頼みの綱が壊れる可能性』が少しでもある、

 となったら、当然、

 タイムリープという手段をとるのは躊躇してしまう。


「タイムリープ一回で稼げる時間も半日が限界やしなぁ……たった半日は短すぎる……頭がぶっ壊れる可能性と引き換えに可能になるのが、たった半日だけの時間遡行(じかんそこう)……死ぬほど割りにあわへん……」


 タイムリープは最後の手段、

 出来れば使いたくない禁忌の技である、

 と強く認識するトウシ。


「結局のところは、どうにか、夜までに、答えを見つけなあかんということ……できるんか? いや、出来る気せぇへんのやけど……くっそぉ……なんで、ワシがこんな苦労せなあかんねん……」


 グシャグシャと頭をかきむしり、

 奥歯をかみしめて、


(考えろ……考えろ……どうすればいい? どうすれば……)


 とにかく、必死になって頭を回す。

 信じられない速度で回転する頭脳。

 その加速度は、人間の限界値を大幅に超えている。


 ギュンギュンと、エグい速さで回り続けた――が、


「……無いぃ……」


 トウシほどの頭脳をもってしても、

 見つからない答えはあった。


「……あかん、どうしよぉ……」


 頭を抱えて、その場でうずくまる。

 あきらめずに、また、頭をまわすが、答えは出てこない。

 この問題は、あまりにも難易度が高すぎた。




 ★




 考え続け、

 考え続け、

 考え続け、

 考え続けた。


 そんなことをしている間に、

 世界は闇に包まれた。


「いや、夜になるん、はやいて……っ!」


 まだ、答えは見つかっていない。

 どうすれば打開できるのか、何も見つかっていないまま、

 無慈悲に、その時間はやってきてしまった。


「ちょ、まって……これ、もう、タイムリープせなしゃぁないやん……でも、タイムリープしたとて、見つけられる? なんにも、ヒントすら見つかってないんやけど……くそがぁ……」

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