38話 本物の真理の迷宮。


 38話 本物の真理の迷宮。


「めちゃくちゃ強い上に、限定的とはいえ無敵とか……もう、えぐいな、おい」


「無敵ではない。『オメガバスティオン』ならば貫通できるし、単純に、私のデータ許容量を超える一撃は処理できない」


「……オメガバスティオン……聞いたことある単語だな……確か、ラスボスが、そんな名前をしていた気がする。気のせいかもしれんけど」


 と、ファントムトークで、この場の空気を自分寄りにしようと必死なセン。


 そんなセンに、彼女は、たんたんと、


「……『オメガバスティオン』という概念は、一言で言えば、『渇望の結晶』。『届かなかった者たち』が遺した『想い』の集合体。希望のカケラ。可能性の鍵」


「抽象的に喋んなっつってんだろ。俺は頭が悪いんだよ。フワフワした言葉で言われてもまったく理解できねぇ」


「理解など必要ない」


 そう言いながら、

 グリムは、グンとのびやかに加速して、

 センの目の前まで距離をつめると、




「――『メギドグリムアーツ・セイバーゼノリカレント』――」




 死神の芸術を魅せつける。

 体術の究極。

 彼女の全てを体現する一手。


「べへぇええええええええっっ!!」


 凶悪に重たい一撃をダイレクトにもらったセンは、

 豪快に吹っ飛んで、壁に思いっきり激突した。


「うっ……げほっ……ごほっ……」


 口から大量の血が流れた。

 全身が重たい。

 目がかすむ。

 頭がクラクラする。


「……いや……ぇと……強すぎん……?」


 ぼやけた視界の向こうにいる彼女に対し、

 センは、思ったことを、そのまま口にした。


「現時点の私は、数値的に、君を超えている。それだけの話だよ。たったそれだけの話。――だから、なんの意味もない」


 そう言いながら、グリムは、センの目の前まで歩いてきて、


 ガシっと、センの首根っこを掴み、


「この迷宮の管理者は、正式に言うと才藤零児で、私ではない。ここでは、私の本領を発揮できない。というわけで、私の『迷宮』にきてもらう。そこでなら、私はもっと輝ける」


「……もう十分すぎるほど輝いていますので……別の場所にいく必要は……ないかと……」


「まあまあ、そう言わずに」


 そう言いながら、グリムは、パチンと指をならした。

 シュンと、視界が一瞬だけ消えて、

 気づいた時には、

 真っ白な空間にいた、


「……ここは……?」


 疑問符を抱いたセンに、

 グリムはたんたんと、


「本物の『真理の迷宮』。才藤零児が作成した迷宮からヒントを得て、私が一から作成したエクストラステージ。その最奥――に、隣接している隠し部屋。いわば、デバッグルームみたいなものかな。開発者である私だけが入れる特別な空間」


「……はぁ……」


「ここでなら、私は、より一層、強く輝ける」


 そう言いながら、

 グリムは、腹の底に力をこめた。


 厳かな雰囲気が増していく。

 ググっと、空間全体の圧力が増した気がする。



「――超虹神気――」



 神々しい虹色のオーラに包まれるグリム。

 先ほどまでの段階で、すでに、けた違いの強さだったが、

 さらに、重たく、強くなる。


「……ここでなら、私は、少しだけ自由になれる」

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