11話 才藤零児は、とにかくキショすぎる。


 11話 才藤零児は、とにかくキショすぎる。


(ひぃぃ……やべぇ、こいつ……終わってる……外見だけじゃなく、中身ともども、正式に終わっている……)


 才藤の返しに対し、センが心底動揺しつつ、

 心の中で、素直な感想を並べていると、


 彼女は、ケロっとした顔で、



「君は、海星出身で一年C組のさいとうれいじくんで、間違いない? 読み方が間違っていたら言ってね」



 と、当たり前のように、もう一度、同じ質問を繰り返す。


 そんな彼女に対し、センは、


(うわ、この女もキテんな……あんなサイコな返しをされていながら、わずかも動じていない。それどころか、鮮やかにかわしていく……やべぇ……こいつら、どっちも発狂している。今、この空間の中で、まともなのは俺だけ……っ……)


 などと、心の中でつぶやいていると、

 才藤も、


(マジか。俺の受け流しに動じないどころか、顔色一つ変えず、全く同じ質問を繰り返しやがった。うーむ、どうやら、ただの美人さんじゃなさそうだ)


 心の中で、普通に動揺しつつも、


(仕方がない。ここまでするつもりはなかったんだが……いいだろう。見せてやるよ。世界一のサイコパスである、このぼくちゃんの……本気のファントムトークを)


 そこで才藤は、コホンと息をつき、目を殺したキモい笑顔を浮かべ、


「ぼくちゃんが才藤零児で間違いないか否か? なるほど、哲学ですな? ふむ、考察してみるに値する題材と言えなくもないですなぁ。まず、存在論的には否(いな)と言えるでしょう。宇宙論的にも否であり、目的論的にも否であると言わざるをえない。以上の三つの前提から結論を出してみた結果、どうやら、ここにいる男が才藤零児である可能性は、存在証明論的観点からは極めて低いと言わざるをえない今日このごろ、いかがおすごしですか?」


 そんな、怒涛のマシンガンファントムを繰り出してきた才藤に、

 センは、


(……きぃっっっっしょぉ……っっっ!)


 と、とても素直な感想を抱いた。


 しかし、彼女は、

 それでも揺るがず、



「ボクは三年の羽金怜(はがね れい)。はじめまして」



 決して折れない鋼の彼女に対し、

 センは、


(えぇぇ……なんで、そんな冷静? 今、才藤、ヤバかったよ? この上なく正式に終わってたよ? なのに、なんで、そんな……やべぇ、やべぇ、やべぇ……この二人、どっちもイっちゃってる……)


 ビビリ散らかしていると、

 才藤は、さらに追撃の一手を加えていく。



「おやおや、ボクっ娘さんですか。おまけに、ポニテで、褐色肌で、生足丸出し。なるほど。あざとく人気を取りにきとりますなぁ。更にアクセントとしてメガネを加えると、よりキャラスペックが引き立つのではないかと、老婆心ながら、アドバイスをさせていただきますよ。おっと、失礼、こちらの方が年下で、しかもぼくちゃんは男の子でした。AHA―HA―HA―」


「そうだね。ところで、今日の放課後、時間ある? せんえーす君の方もどう?」


 と、当たり前のように切り返してきた彼女に対し、

 センは、心の中で、


(正気か、この女! あんだけ、濃厚なファントムトークをくらっておいて、オールスルーとか、どんだけ……)

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