31話 母上の望みは、世界の再構築。


 31話 母上の望みは、世界の再構築。


 センには、絶対に譲れない条件がある。

 そこが満たされてからがはじまり。

 他の全部は、オマケにすぎない。


「――『こいつのことは死んでも守りたい』と心の底から思える『パートナー』と、静かに、穏やかな日々を過ごす……的な感じだったら、まあ、許容範囲内というか、ありえてもいい未来なんだが。それ以外はごめんこうむる」


「なるほど、あまり欲がないタイプなんでちゅね」


「いや、俺は欲深いさ。色々経験してきた結果、いま俺が言ったことが何より得難いものだと知った。つまり、俺は、この世で最も難易度の高い要求を口にしている。あきらかに、ワガママで欲深だ」


「……センたんは、どうやら、ずいぶんと、変わった人間のようでちゅねぇ。ふむふむ……なるほど……」


 何かを深く納得したかのように、

 何度もうなずいてから、


「つまり、オイちゃんと二人で幸せに暮らす世界が望みだと……まいりまちたねぇ。交際期間0でプロポーズしてくるような計画性のない男と一緒になって大丈夫でちょうか……色々と心配な点も多々ありまちゅが……んー……まあ、いいでちょう。仕方がない! その要求、呑んであげまちゅ」


「謎の妄想で話を展開させないでくれます?」


 などと、

 そんな、益体(やくたい)のない話をしている時のこと。


 ギギギギギッッ!

 と、奇妙な音がフロアに響き渡った。



「……ん? なんだ?」



 音の出どころは、

 終理が搭乗している兵器。

 ミスターZ。



「おい、そのロボット、なんか変な音がしているが、大丈夫か?」



「……」


 声をかけても、終理は、反応を示さない。

 音声が途切れてしまうと、状況はさっぱり不明。


「おーい。……おい、マジで大丈夫か? トラブルなら、SOSを出してくれ」


 そう声をかけたところで、

 ミスターZの目がギラっと光った。


 その光を受けて、センは、


「おいおい……殺意を感じる瞳だな……どういうつもり? まさか、俺と戦うつもりじゃないだろうな。無駄だぞ。お前ごときが、いくら頑張ったところで」


 そう声をかけると、

 ミスターZのAIが、



『母上の望みは、世界の再構築。しかし、貴様は、それを望まない』



「……話聞いてなかったのか? 今、どういう風に改築しようかという話をしていただろう? 親の話に子供が口出しするんじゃねぇ」


『貴様は対話による妥協点を探していただけだ。母上の望みをかなえる気はない。貴様に、今ある世界を終わらせる気はない』


「ロボットのAI風情が、ずいぶんと知った風な口をきくじゃねぇか」


『母上にとって、貴様は邪魔な存在だ。消えてもらう』


「そうかなぁ。むしろ、俺は、お前の母上にとって、もっとも必要な存在のような気がするが」


 そう言いながら、

 センは武を構えて、


「俺と酒神の対話は、まだ終わっていない。邪魔するな。引っ込んでろ」


『邪魔をしているのは貴様の方だ。貴様など、母上には必要ない』


「……お前は俺に殺意を向けた。それなのに、俺は引っ込んでいろと忠告をしてやった。ここまできたら、もう、壊されても文句は言えない」

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