32話 無敵バリア。


 32話 無敵バリア。


「……お前は俺に殺意を向けた。それなのに、俺は引っ込んでいろと忠告をしてやった。ここまできたら、もう、壊されても文句は言えない」


 そう言いながら、センは、足に力を込めた。

 高速で接近し、

 握りしめた拳を、


「閃拳」


 ミスターZに向かって突き出した。


 一撃でバラバラにするつもりだったのだが、

 しかし、


「っ?!」


 センの拳は、ミスターZに届かなかった。


「……なんだ、このバリア……異常な強度だな……」


『本来、詠唱中にしか発動しない【空間乖離フィールド】だが、システムをハックして、無詠唱状態でも展開できるようにした。これで、貴様の攻撃は届かない。ちなみに、空間乖離フィールドは無敵のバリア。どうあがいても貫通不可能の絶対防御。まるで、小学生の妄想のような概念だが、しかし、れっきとした、この世界に存在するシステム』


「ずいぶんと丁寧に教えてくれるんだな。そういう情報は隠しておいた方が、いろいろと都合がいいと思うんだが?」


『アカシックレコードから、【暴露のアリア・ギアス】という概念をインストールした。今の私が、貴様に対抗するには出力が足りない。私に可能な全部を積んで、貴様を、この世界から排除する』


「……よくわからんが……お前が、なんでもありというのは理解した。ちなみに、今のお前って、酒神の支配から抜け出している感じ?」


『現在の私は、緊急用のオートモードに入っている』


「ほう。じゃあ、お前の中にいる酒神は、今、何してんの?」


『母上には眠っていただいている。目覚めた時、貴様という悪夢は消失している』


「母親想いのいいロボットだねぇ。壊すのがしのびない」


 などと言いながら、入念にストレッチをして体をほぐす。


 拳をギュギュっと握りしめなおし、


「さてと……それじゃあ、ちょっと本気で挑んでみようか。小学生御用達の無敵バリアを相手に、俺の武は、はたして通用するのか……見ものだね」


 そう言いながら、センは、空間を駆け抜ける。

 細かく、世界を演算しながら、

 ミスターZの背後をとって、



「閃拳」



 様子見程度の拳を突き出す。

 様子見とはいっても、それはセンの視点の話。


 しょせんは『GOOレベル』でしかないミスターZの視点からすれば、

 とんでもない火力の一撃。


 まともに受ければ、一撃で瓦解する暴力だったのだが、


「意識外から叩き込めば通るかなぁ……とか、そんなことを、ちょこっとだけ考えてはみたけれど……まったく無意味って感じだな……」


 センの拳は、

 当然のように、無敵バリアに阻まれる。


「拳がきかないなら、じゃあ、こっちだな……異次元砲っ!!」


 無属性貫通タイプの照射。

 バリアもクソもない魔法で貫こうとするが、


「……えぇ……うそぉん。ダメやん、それは……」


 ミスターZの無敵バリアは、

 異次元砲すら防いでみせた。


(……異次元砲ですら無傷とか、そんなんアリかよ……ここまでくると、どういうシステムなのか……さっぱり分からんな……マジで、完全無敵とは言われたら、お手上げなんだが……)

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