28話 この上なく尊きゼノリカの王。


 28話 この上なく尊きゼノリカの王。


(……『既存の宗教を否定する』というコンセプトの新興宗教か……な、なんか、ストレートな宗教よりも、より、エグみと苦味が強い気がする……つぅか、なんだよ、カドヒト・イッツガイって……だっせぇ名前だな……)


 カドヒト・イッツガイという名前に対して、

 過剰なほど『妙な嫌悪感を抱いてしまった』、

 ということに対し、疑問符すら抱かないセン。


 『通常の感覚』で言えば、カドヒト・イッツガイは、

 『異世界人の名前』というフィルターを通した場合、

 そこまで『際立って、おかしな名前』とはいえない。


 もちろん、多少は違和感を覚えるだろうが、そこまでが精々のはず。


 だが、センの視点だと、

 『カドヒト・イッツガイ』という語感は、

 かの有名な『オニャンコポン』を置き去りにするほど、

 大きな違和感を覚える名前だった。


 あまりにも自然に、センは、カドヒト・イッツガイという概念に対して、心の壁をつきつける。


(過剰な妄信が悪いとは言わねぇが……『妄信する相手を間違える』のは普通に最悪。カドヒト・イッツガイなんてふざけた名前のやつを崇めている時点で、こいつらの組織は終わっている……)


 などとドン引きしているセンに対し、

 『リフレクションの彼』は、




「我らのリーダーこそが、命の王にふさわしい! 『センエース』などという『単なる幻想』ではなく、カドヒト・イッツガイこそが、真に『ゼノリカの王』にふさわしい――」




 と、そこで、センは、たまらず、


「ちょ、ちょっと待ってくれる?」


 『リフレクションの彼』に『待った』をかける。

 彼の発言の中に、どうしてもスルーできない単語があったから。



「あんた……いま……『センエース』って言った?」



「? ええ、言いましたが、それが? あ、もしかして、あなたも、『センエース』という概念に対し憤慨しているクチでしょうか? だとすれば――」


「えっと……ちょっと待ってね、奔放(ほんぽう)なおしゃべりを続けないで……えっと、まず、『ゼノリカ』ってのは、世界政府的なアレだよな……」


 特に説明を受けなくとも、

 これまでの流れや、この都市全体を見渡してみれば、

 この世界全体が『ゼノリカ』という組織を中心に動いていることは明白。


 よって、そこに対する質問などないが、


「で、あんたの話の流れを整理するに……ゼノリカの王は……その『センエース』なのか?」


 センの質問に対し、

 リフレクションの彼は、

 やれやれとでも言いたげな顔で、首を横に振って、


「なにを、愚かなことを。もちろん違いますとも。『ゼノリカの王』は『三至天帝』であり、センエースなどという偶像ではありません。あんなおとぎ話を信じるのは、アホの子供が、夢見がちなバカ野郎だけです」


「……あの、質問にだけ答えてくれる? 『それってあなたの感想ですよね?』とか煽らせないでくれ」


 イライラを隠さず、

 直球勝負で、


「ゼノリカの王ってのは、センエースって名前のヤツなのか? この質問にだけ、明確に、簡潔に答えてくれ」

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