29話 第一アルファ人は最高の潜在能力を持つが……


 29話 第一アルファ人は最高の潜在能力を持つが……


「質問にだけ答えてくれる? 『それってあなたの感想ですよね?』とか煽らせないでくれ。ゼノリカの王ってのは、センエースって名前のヤツなのか? この質問にだけ、明確に、完結に答えてくれ」


 そんなセンの直球に対し、

 『リフレクションの彼』は、

 『しぶしぶ感』を前面に押し出しながら、


「……まあ、一応、現時点では、『主神だ、英雄だ』などと、色々言われていますよ……ええ、『そう言われている』のは事実です……が、あくまでも、『そういう伝説が無意味に幅をきかせてしまっている』というだけで、実際のところは、単なる偶像。かつての『混沌の時代』をコントロールするために、ゼノリカが『道標』となる光を捏造……ん、いや、というか、もしかして、あなた、漂流者ですか? 『質問風の煽り』で、『リフレクションの理念に対抗している』というワケではなく、本当に、『センエース神話』をご存じでない?」


「まったく知らん」


 と、一刀両断してから、


「ちなみに、俺は、第一アルファ人だ。できれば、もっとはやくに気づいてもらいたかったね。ほら、よく見れば、『最強世界出身の風格』が、あふれんばかりに、にじみ出ているだろう?」


 などと、鼻高々に胸を張るセンを尻目に、

 リフレクションの彼は、渋い顔で、


「……ちっ、漂流者か……」


 舌打ちを一つはさんで、

 ぶつぶつと、


「ポテンシャルが無駄に厄介な第一アルファ出身だと、ゼノリカからの監視も厳しい……窮屈さを覚えて、かえりたくなる可能性が高いな……」


 もし仮に『第一アルファの潜在能力をフル活用すれば、余裕で俺TUEEハーレムが出来る』――というのであれば、残りたがる者も、それなりの数にのぼるだろうが、しかし、この第二アルファでは、有能な存在が多すぎて、どう頑張っても無双は不可能。


 第一アルファ人のポテンシャルがあれば、

 『ゼノリカの天上』に食い込める可能性は十分にある。


 だが、『天上』に到るために求められる努力は、第一アルファ人のポテンシャルをもってしても、ハンパではない。

 第一アルファの視点で言うところの『医者になる』の5倍は厳しいと思っておいた方がいい。


 ちなみに、『それほどまでの努力が出来る者』であれば、

 当然、第一アルファで、すでに、それなりの地位についていたりする。



「魔物などの『際立った外敵』が存在しないがゆえに、比較的、根性なしの割合が高く、懐郷病(かいきょうびょう)にかかる率がダントツだと聞いたこともある……いらないな……そんなカス……」



 第一アルファは、最低限の努力が出来て、ある程度の金さえあれば、

 それなりに楽しく暮らせる安全な世界。


 第二アルファのような『ジェットエンジンがついたうさぎ』が、日夜、目を血走らせて、狂ったように努力し続けている危険度満載の世界で、『世界の歯車の部品のひとかけら』となって、休む間もなく奔走する日々を送るよりも、第一アルファでよろしくやっている方が、はるかに楽。


 となれば、畢竟(ひっきょう)、『普通に、家に帰りたい』と思う者の数が増える。


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