43話 待たせたな。主役の登場だ。


 43話 待たせたな。主役の登場だ。


(……すげぇ……全員、俺のことを、完膚なきまでにシカトしている……石ころ帽子をかぶっている気分だ……)



 『体力テストの段階で満身創痍のセン』など、

 『いつでも一瞬で倒せる相手である』と認識されて当然。


 そんなカスの処理をしている間に足元をすくわれてはたまらない、

 といった感じで、センのことは、いったん、

 『存在しないもの』として扱われることとなった。


 『目障りなのは確か』なので、

 『誰か飛ばしてくれたら、ありがたい』のも事実だが、

 しかし、誰もが、その雑用を『自分が請け負う気』は一切ない、

 といった感じで、見事に、センは、完全シカトを受けている。



(おそらく、ある程度、数が減るまで、シカトされ続けるな……ありがてぇ……今のうちに、少し休ませてもらおう……)



 どっこいしょ、と腰を下ろして瞑想をはじめるセン。

 周りの全員が必死になって戦っている間、

 一人だけ、武舞台の上であぐらをかいている姿は、

 とことんシュールの一言につきた。



「すぅ……はぁ……」



 ついには目を閉じて、

 深く、長い、呼吸を繰り返すセン。


 ある意味、とんでもない勇気の持ち主と言える。



 ★



 予選のバトルロワイアルが始まってから、

 制限時間のちょうど半分である15分が経過したところで、

 武舞台の上に残っていたのは20人。


 どうにか10人を脱落させたが、

 5人以下にするまではまだ15人を削る必要がある。


 ――ただ『残っている20人』の実力が、

 『いいバランス』で拮抗しており、


 ……ゆえに、セン以外の全員が、


(((((あ、これ、泥仕合になるヤツだ……ヤバイ……)))))


 と、心の中で明確な焦りをつぶやく。


 ここに残っているメンツは、どいつもこいつも体力オバケで、

 20~30分程度なら、全力全開で動き続けても超余裕。

 全員、まだまだ、ハイコンディションで闘えそうな雰囲気。


 ――と、そんな『膠着状態』に陥った戦場へと切り込む男が一人、




「待たせたな」




 八方で高次戦闘が行われるバトルロワイアルという戦場でただ一人、

 ゆっくりと休憩をしていた大物が、静かな呼吸で、場の空気を裂いた。



「息は十分に整った。ここからは俺のターンだ」


 一瞬だけ、ピーンと、場は張り詰めたが、

 しかし、すぐに、

 参加者たちは、センから視線を外して、


(((((さて……どうしたものか……)))))


 と、均衡状態の切り崩し方法についての悩みを再開する。


 ――ちなみに、このタイミングで、

 センが無駄に名乗りをあげた理由はただ一つ。

 センも、この状況に対して、



(あ、ヤバい……これ、30分以内に5人以下にはならないパターンのヤツだ……)



 と、焦りだしたからである。

 ――最初のころは、


(よし……そのまま、みんなで削り合え。俺のことは、もっと忘れろ)


 と、休憩しつつも、存在感を消すことに全力を尽くしていたが、

 10分を過ぎても、なかなか数が減らないことに焦りだし、

 15分たっても、まだ半分になっていないという事実を目の当たりにしたことで、


(……くそ……仕方ねぇ……)


 といった感じで、場の空気を切り裂きにいったのである。

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