6話 私たちの家。
6話 私たちの家。
(気がするだけかい! 俺の時間と心配を、返せよ!)
(さらには、もっと先へ――)
(無限地獄はもういい!)
ヨグシャドーの妄言に対し、
悲鳴のような声をあげるセン。
苦虫をかみつぶしたような表情で、天を仰ぎ、
(クソが……超レアアイテムをたくさん手に入れて、だいぶ気分よかったのに、お前が謎の誇大妄想を垂れ流すせいで、普通にヘコんだ。どうしてくれるんだ)
(どうもしない。17ミリ分の協力はするが、それ以上のサポートをする気はない。私はただの観測者。貴様がたどり着く先を見届けるだけの装置に過ぎない)
(楽なポジションだな。できれば、俺もそういう役職におさまりたいぜ。心底、うらやましくてたまらねぇ)
心の中で、そうつぶやくと、
センは、背伸びをして、
「さて、いい時間だ……流石に、そろそろ帰るか」
と、帰宅を提案すると、
紅院が、
「そうね……そろそろ帰りましょうか。『私たちの家』に」
「じゃあ、明日の夜もよろしく。いやぁ、しかし、GOOが、昼間にも沸くようになったのなら、アイテムも、昼夜問わずに沸いてほしいなぁ」
などと言いながら、きびすを返したセン。
そんなセンの肩を、
紅院は、ガっと掴んで、
「ちょっと待ちなさい。方向が違うわ」
「ん? 何を愚かなことを。俺の家はあっちだ」
「それは実家でしょう? 『私たちの家』はあっちだから」
「……ん? んー? んんん……?」
言葉の意味はよく分からんが、とにかくすごい寒気を感じたセン。
そこで、茶柱が、
「忘れたのかにゃ? ツミカさんたちとセンセーは正式に婚姻状態にあるにゃ」
「新婚で別居はさすがにありえないでしょう。まあ、最初から別居のスタイルをとる夫婦も中には存在するのでしょうが、私たちは、それを認める気はありません。ちなみに、あなたの実家で、ご両親と共に暮らすというのも悪くはないのですが、しかし、せっかくの新婚生活なのですから、夫の実家で二世帯同居ではなく、新居で夫婦水入らずの方がいいですね」
「なんなら、正式に多数決で決めよか? 二世帯同居や別居に反対の人ぉ」
そう言いながらトコが手を上げると、
みごとな予定調和で、
紅院、黒木、茶柱の三人も続いた。
四対一。
民主主義の絶対的かつ圧倒的勝利を見届けた茶柱が、
「はい、というわけで、『ラブラブ新居生活からは逃げられない法案』が衆参両院に可決され、見事成立と相成りましたぁ。おめでとうございます。パチパチパチィ」
などと言いつつ拍手をするのを横目に、
センは、
「うんうん、よかったよかった。好きなだけ、好きなことをほざくがいいさ。お前らがどう思おうと自由さ。お前らの中ではな」
そう言い残すと、
センは、
「じゃ、俺は、お前らの目が届かない『ここではないどこか』で、何者にも邪魔されない、自由で豊かで静かな独り身生活を堪能させてもらうから、さよーならぁ」
そう言いながら、
瞬間移動でこの場から逃げようとした――が、
「ん?」
瞬間移動は発動してくれなかった。
いつもなら、ヒュンヒュンと、自由に、どこへでも行けたのに、
今のセンは、なぜか不自由な空間的束縛の中にいる。
「あれ? え、なんで……」
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